コロナワクチンを打ちたくないのは、副反応(副作用)が怖いからではなく、人間の本能だから。認知バイアスから考察。

コロナワクチンをすぐに打ちたくないもしくは打たないと決めている方へ。人間の不確定要素のある物事へ本能的に反応した結果です。人間の行動心理、認知バイアスから説明します。

この記事を書いた人

富田雅彦:耳鼻咽喉科専門医: ドクターズファイル

めまい平衡医学会認定めまい相談医

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富田耳鼻科クリニック@新潟県新発田市舟入町3丁目11-18-7

目次

私は、とりあえず予防接種を打って数年前の生活に早く戻りたい

世の中マスコミや SNS の一部の人たちは新型コロナウイルスに対するワクチンの予防接種について否定的な意見を言っている人たちがいます。打つか打たないかを決めるのは、自分自身という努力目標になりました。私は医療者で予防接種は2回済んでいます。

私は、皆さんがワクチン予防接種に抵抗感を覚える理由を考えてみました。行動経済学のナッジ理論というものになります。厚労省も健康診断の受診率を向上するために、このナッジ理論を使って受診率向上への取り組み(アイキャッチ画像参照)をしています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000506623.pdf

これに沿ってコロナワクチンの予防接種について考えてみます。子供にコロナワクチンを打つかどうか迷っている人には以下の記事を。

得る喜びより失う痛み

不確実なことに対してどのように人間が意思決定するかを表すプロスペクト理論が有名です。2つの本能が分かっています。

①人間は目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先し、損失を目の前にすると、損失そのものを回避しようとする傾向(損失回避性)があります。

コロナウイルスワクチンを打ってすぐにでるであろう副反応がいわいる損失であり、これが目の前にあります。コロナウイルス感染症になりにくいという接種者の利益は早くても1か月後であり、さらに感染しづらくなっているとは、実感として感じません。得る喜びが目の前に存在していないわけです。

②「価値の大きさは金額に比例しない。金額が2倍になると、価値は2倍にはならず、2倍弱(1.6倍ぐらい)になる」

予防接種をした人が発症の率が95%少なかった。発症リスクが20分の1になる。これが有用性の割合です。副反応でおこる接触部位の痛みが67-74%であること、だるさや頭痛、筋肉痛が40-50%でるということも紛れもない事実です。

接種した翌日には体調不良で仕事を休まざるを得ないという人もいます。インフルエンザワクチン予防接種よりかなり副反応の頻度は高いようです。

コロナにかからなくなるという利益の割合つまり95%と、副反応が起こり現在の生活が脅かされる70%弱は、人間は本能的に25%の差はないと感じます。上の計算式に当てはめて、人間が感じる価値を計算すると、副反応の痛みの損失1に対して感染しにくくなる利益の価値は1.08でした。損失と価値がほとんど同じという結果です。同じ価値なら失う痛みのほうが嫌だと本能が反応しているわけです。

不確実なことに対する人間の本能的価値判断の癖によれば、損失と利益がほぼ同じ、目の前の損失の方をより嫌う傾向にある。だから予防接種を打ちたくないと本能が感じているのです。

この癖を踏まえたうえで、現実の確率を素直に比較しましょう。95%と70%は同じではありません。95%の確率のほうが高いのです。得られる割合のほうが高いことを認識するべきです。数年後には予防接種によって数年前の生活を送れるようになるはずです。目の前の痛みには一瞬目をつぶりましょう。

選ばなくていいは最強の選択肢

現状維持バイアスといわれるものです。人間は本能的に「情報の取得や意思決定を省略し、サボる」癖があります。人間は膨大な情報を取捨選択して、決定をして生活しています。

これは無意識に行われていることが多いのですが、できれば決定を省略したほうが脳は疲れません。さぼるためには、新しい行動や変化をしないほうが楽でよいわけです。

予防接種をするかしないか、しない選択肢を選べは行動しないですみます。前述のプロスペクト理論も関係しますが、変化することで損だけは、したくないのです。現在予防接種をしないと決めている人は、変化を嫌っているのでしょう。

だって副反応が怖いから、開発が急で信頼性が担保されていないとかいろんな理由をあげる人がいますが、実は接種を今は受けないつもりという決定があって、その後に理由を考えているのです。理由は、後付けです。

ここにも確証バイアスといわれる人間の本能的な行動の癖があります。人は自分が正しいと思うことを肯定する情報のみを目に留め、集めてしまう現象です。理由を強固にするために色々情報を拾い集め、自分の都合の良いことだけ取り上げる傾向にあるのです。

簡単にする簡単に見せる

現状維持バイアスを克服するには、変化のハードルを下げればよいのです。予防接種を受けられる方法を簡単にすれば、みんな行います。今どきのテレビのリモコンに『ネットフリックス』のボタンがデフォルトでついていますよね。思わず押してログインしてしまう。パソコンにあらかじめウイルス対策ソフトが入っていて簡単に申し込める。このように簡便さが予防接種のシステムにあれば良いのでしょう。

何もしないことのコストを意識しましょう。予防接種をうたなければ今まで通りの生活です。予防接種を打たないことは、安全ではありません。副反応を受けなくて済みますが、コロナウイルス感染のリスクに対しては高くなり危険です。

何もしないでいるとどれだけのことを失っているのでしょうか。数年前の生活、お友達との楽しい会話、好きな時に旅行に行けるなど、このままではその時の生活を失っているはずです。

EU離脱の国民投票の時に離脱推進派の上げたスローガンを知っていますでしょうか。当初 Take control だったスローガンを Take back controlにしたそうです。そう主権を取り戻すです。アメリカ元大統領のトランプのスローガンも同じです。Make America greatではなくMake America great againと最後にagainとつけたそうです。

予防接種を打って元の生活を取り戻しましょう。

みんな気になる、みんなの行動

周りの人に意見をあわせて、自分の意見を考える傾向にあるということです。同調現象といわれる社会心理学の考え方です。1951年のアッシュの同調実験が有名です。

Asch experiment target line and three comparison lines

左の線と同じ長さはの線はどれかを選んでもらう実験です。ABCの選択枝が用意されて、周りの人全員サクラで間違った答えを周りの人が何回も選び続けたところ、1度でも間違った選択肢を選んだ人の割合は75%だったそうです。25%の人しか自分の信念を曲げずにCという誰が見ても明らかな正答を選び続けられなかったのです。

これには、2つの理由が考えられています。1つは自分の意見が間違っているのかもしれないと周りをみて自信がなくなるということ。もうひとつは周りの人に異質と思われたくないために周りと同じ答えを選んだということです。

今、現在はすぐに打ちたくないと考えている人たちも、周りの人が普通に打ち始めていくと、より接種率が上がっていくに違いがありません。最初は打ちたくなかったけど、大丈夫そうだから打とうかなと考えを変えて後で打っても良いと思います。ぜひとも予防接種を打つ方向で考えていきましょう。

感情を無視した思考は本来成り立たないし、成り立っているように見えても、仮のもの

私たちの意思決定は、意識的に行っているわけではなく、無意識の感情で行っているという「受動意識仮説」と呼ばれる考え方あります。虫の知らせとか直感とよばれる感情による選択です。基本的に感情で動いているだけで、そのうちの一部に意識とか思考があるに過ぎないというわけです。

メディアは、このような感情の動きをよく知っていますから、過剰に感情を動かすことで私たちの意思決定を歪めます。感情の演出に対しては警戒して、メディアが私たちに与えたい情報だけではなく、その周辺情報も自ら入手して、自分の感情の行方を判断する必要があります。

コロナウイルスワクチンは、他国でたくさんの人々にすでに接種されています。ここから色々な情報や経験が得られるはずです。日本人と欧米人の人種差はワクチン接種に対してはあまり考えなくてよいと思います。これらの情報を日々仕入れて、人間の意思決定の癖も知ったうえで、自分で接種をするかどうか選択をしていきましょう。

結論

正確に利益95%と損失はあっても70%で軽微、この確率を正確に天秤にかける。

効果は見えにくい、副反応は目に見えるし大きく報道されやすい。

先行する他国の情報は何百万と数が多く信頼性がある。

日本人だけ特殊とは考えにくい。マスコミはワザとセンセーショナルに報道する、それが仕事。

クーポンが来たら即行動。そのためには正確な情報のみを拾って自分で接種するか決めましょう。

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