【専門医が解説】痰が出る原因と痰が絡む対処法を教えます

新潟県新発田市の耳鼻科医の富田です。

今回の記事は痰が絡む方の、痰が出る原因とその対処方法をお話しします。

この記事を書いた人

富田雅彦:耳鼻咽喉科専門医: ドクターズファイル

めまい平衡医学会認定めまい相談医

YouTube: 耳鼻科医富田のいいみみチャンネル

富田耳鼻科クリニック@新潟県新発田市舟入町3丁目11-18-7

  • コロナ感染後にノドに痰が絡む感じが取れない
  • 何か鼻の奥からノドに垂れる感じが続いて煩わしい

このような方に読んでほしい内容です。

痰が絡むととっても不愉快ですよね。症状を和らげようと咳払いをしてみたり、鼻を鳴らすように鼻ススリをするけど違和感がまったく取れない。

痰を出していると家族に汚いと言われたり、会社では咳をし過ぎでまわりの目が気になる…このような方は多いのではないでしょうか。

今回は風邪ではないのに、痰が絡む方(2週間以上)への対処方法を解説していきます。

記事を読んでいただければ、痰の出る原因や仕組みを知り、痰の色から自分の病名を知ることができます。

そうすれば自分に合った薬や、しつこい痰の解消法を見つけることができるはずです。ぜひ最後まで記事をお読みください。

目次

痰が出る4つの場所

まず皆さんに大前提をお伝えいたします。実は痰が出る身体の場所(部位)は4つあるんです。

痰といえば、肺だけで作られると思っていませんか? 肺から湧き上がってくる痰は、痰がらみの原因として頻度は少ないです。痰が作られるのは、こちらです。

  1. ノドの下(上咽頭)
  2. ノドの上(ノド仏)

これら4つの痰について順番に解説していきます。記事を読みながら自分の痰がどこから出ているか確認してみてください。

痰の出所①:鼻

鼻水が前から出ないで、鼻の奥に流れています。鼻水が奥から、ノドに落ちてしまい、痰が絡まります。健康な時でも、鼻水は少しずつですがノドにまわっていて、

皆さんは、知らずに意識せず飲み込んでいます。

ただし、鼻水の量が増えたり粘りが強くなると、ノドに回った鼻水が、無意識に飲み込めず、痰が絡んだようになります。この鼻水の変化を引き起こすのが、アレルギー性鼻炎と蓄膿症です。

アレルギー性鼻炎の痰の特徴と治療薬

アレルギー性鼻炎は、くしゃみと鼻水・鼻づまりの症状です。鼻がつまると、量の増えた鼻水が前に出てきません。鼻を噛んでも前から鼻水が出ずに、奥に回る量がふえます。そのため痰絡みを感じるわけです。

痰の色は鼻水の色と同じ、透明から白です。この写真は鼻の奥に貯まったアレルギー性鼻炎の方の鼻水です。

春と秋にはいつも痰がからむとか、季節の変わり目に痰が多いという場合、アレルギー性鼻炎を考えても良いかもしれません。

治療は、市販のアレルギー薬を試しましょう。こちらの記事で解説しています。

蓄膿症の痰の特徴と対処法

もう一つの鼻から来る痰がらみ、蓄膿症は、黄色の痰が出てきます。鼻の周りにある副鼻腔と言われる空洞の中で炎症が強く起こっているため、黄色い鼻水が出るのです。鼻水のネバネバが増して量も多くなりますので、ノドにまわって張り付きやすくなります。

蓄膿症の特徴は黄色の痰が常に出る事です。朝だけとか、たまにではなく、いつも黄色です。そのほか、下を向くと頬が痛んだり、頭の前が重い感じがする。このような方は、蓄膿症を疑いましょう。

この写真は、受診された患者さんの鼻の奥です。2週間くらい前に風邪を引いていて、鼻水は止まったけど痰の絡みがあると受診されています。

蓄膿症になりかけの黄色の鼻水がノドにまわっています。病院に受診する時間がない方は、こちらの動画を参考にしてください。

後鼻漏とは?

鼻水がノドに回る事を後鼻漏といいます。後ろにまわって鼻水が漏れている事を表す言葉です。鼻からの痰についての詳細は、こちらの記事を参照ください。

痰の出所②:ノドの上(上咽頭)

次の痰の発生場所は、ノドの上(上咽頭)です。鼻のつき当たりに位置する、ノドの一番上の部分です。ノドと言っても口を開けても見えません。

上咽頭の前には、のれんのようにノドチンコがぶら下がっているからです。鼻から入れたファイバーで確認しないと診断できません。

鼻の突き当りの上咽頭は、子供の時には、リンパの塊である扁桃腺が存在しています。この扁桃腺は、年を取ると小さくなり、大人では根っこだけになります。

そのためノドの他の部分より上咽頭は炎症を起こしやすいのです。そして炎症で腫れた部分から、この写真のように、液体が出てきます。

ノドの上(上咽頭)の特徴

これが普段は、白い色の痰となり、ノドに絡みます。ただし乾燥が強かったりすると、黄色になったり、かさぶたのように塊となります。この方のような黄色のかさぶたです。

特に、寝ている時はノドが乾燥するため、朝一番の痰が、黄色になったり血が混じる様なことも多いです。

痰以外の症状

痰以外の症状としては、両方の耳の下からあごの付け根を押すと痛いと訴えたり、前あごと首の付け根のあたりの違和感を訴える人がいらっしゃいます。

このような痛みや痰がなぜ強くなるか原因はよくわかっていません。普段から上咽頭は、慢性的に炎症がある部分だからです。体の疲れやストレスが強い時には、免疫力や抵抗力が落ちて、炎症がより強くなり症状が出るのではと考えられています。そのためか、風邪を引いたあとに、しばらく上咽頭の炎症が残っていることがみられます。

そのほか、口呼吸が良くないと考えられています。口で呼吸すると、ノドの突き当りから鼻の突き当り全体が乾燥してしまうからです。エアコンの風に長く当たっていたとか、タバコを吸いすぎたなどの慢性的なノドへの刺激も悪いと思われます。

慢性上咽頭炎の治療法

この慢性上咽頭炎の治療は、痰を切る薬で、ノドの粘膜表面に潤いを与えます。トラネキサム酸というノドの赤みや炎症を取る薬を飲むこともあります。市販薬でしたらハレナースや痰に効く風邪薬が良いと思います。

鼻うがいも効果的です。口呼吸ではなく鼻呼吸する癖をつけて、ノドの乾燥を防ぐようにしましょう。 ストレスや体調の変化によっても炎症を引き起こしますので、体調を整えることも重要と考えます。

痰の出所③:ノドの下(ノド仏)

3つ目に痰がらみの原因となる場所はノドの下(ノド仏)です。喉頭つまりノド仏に痰が絡みます。

喉頭は肺と食道の分かれ道である交差点です。この交差点の粘膜が、薄くなったり、むくんだりして敏感になって痰が絡むのです。ノド仏の粘膜が敏感になると、通常10の量の痰で痰が絡んでいると感じる場所が、5の量で痰の絡みを感じてしまうのです。

ノド下に絡む痰は、実は口から出てくるツバ、唾液です。ノドの表面は、唾液に覆われ、潤いを保っています。唾液が多くなると無意識に我々は飲み込みます。

しかし粘膜側が敏感になりすぎている時は、唾液が少量でも、痰がらみだと感じるのです。このノド仏の痰は唾液ですので、透明から白色です。咳払いなどで、口から出そうでも、少なすぎて出すことができません。

この時、ノドの下の痰絡みより、ノドがヒリヒリする、ムズムズしてきて空咳が出るといった症状を訴える人も多いです。ノド仏の下、全体が腫れぼったく感じる。ツバを飲み込んでも引っかかるような感じがする時は、ノド仏の痰を考えましょう

ノドの下(ノド仏)の痰絡みの特徴と治療法

ノド仏の痰は、胃酸がノドまで逆流する、逆流性食道炎で起こります。食後に、消化液が、胃からノドまで逆流してくるのです。そうすると、強い酸性の胃酸が、ノド仏の粘膜を攻撃して薄くしてしまいます。

この写真の方は、食道への入り口のノドの粘膜が炎症を起こし腫れています。

これを治す薬は胃薬になります。市販薬でしたら、「ガスター10」などのファモチジンが良いですが、長期間飲むのはやめましょう。長く飲むなら、一般的な胃薬か、漢方薬が良いと思います。

あなたが寒がりなら「六君子湯」、暑がりなら「半夏厚朴湯」というノドの詰まりを取る薬がおすすめです。

実は、薬をのむことより重要なのは、生活習慣の改善です。食事に気をつけたり、食後すぐに横にならないようにするなど、こちらの記事にまとめていますので、ぜひ参照ください。

ノドの下(ノド仏)で、痰が絡んでいると感じる場合は、唾液ですので飲んでも良いです。水を含んで飲んだり、のど飴をなめてノドに潤いを持たせると良いでしょう。

痰が絡むからと言って、無理やり絞り出すような例えば「ゴホン!」とノドを閉めることは避けましょう。ノドが無理に動くので、炎症を引き起こしやすく、敏感さがさらに増してしまうからです。

痰の出所④:肺

さて、最後に考えるべき痰は、肺から出てくる本当の痰です。

実は皆さんが真っ先に肺の病気を考えるはずです。でも痰がらみの原因としては、多くはありません。風邪からこじれて肺炎になる人は少ないからです。

注意するべき人は、抵抗力が落ちた高齢の方や、糖尿病などの合併症のある方です。その他、タバコ(毎日ひと箱)を20年以上吸っている方。もしくは吸っていた方も含まれます。

長年の喫煙は、肺癌や慢性肺気腫といった病気になる確率があがるからです。これらに当てはまる人で、痰がらみが長く続く場合は、市販薬などにたよらず、病院を受診してください。

まとめ:しつこい痰の対処方法

痰が絡む原因4つと、その特徴や痰の対処法について解説をしてきました。

最も頻度が多く痰が絡むのは、ノドの上(上咽頭)とノドの下(ノド仏)から出てくる痰です。ノドの上は上咽頭炎という、ノド粘膜の慢性的な炎症です。左右の顎と首の付け根から、顎の下あたりに違和感を感じる方が多いです。

ノドの下(ノド仏)のあたりに、痰が絡む感じがあれば、逆流性食道炎を考えましょう。とくに空咳やツバのつっかえ感があるときです。この時の痰は透明から白の唾液ですので、飲み込んでもかまいません。

痰の色が常に黄色の後鼻漏も痰がらみの原因となります。風邪をひいた後に2週間以上、黄色の痰が絡み鼻水も出る・下を向くとほっぺたが痛い、このような場合は蓄膿症を強く疑って治療しましょう。

一番頻度が少ないけれど重症になるのは、肺からの痰です。タバコを吸っていたり、高齢の方で黄色の痰が長く続く場合は、迷わず病院を受診してください。

以上です。この記事が参考になったという方は、ぜひブックマークをして読み返してください。

最後に私が皆さんに伝えたい、大事なことはこの1点です。

  • ノドは、とても敏感だということ

ノドは食べ物や異物が肺に入らないように、守っている部分だからです。だからこそ、敏感になって少しの痰も肺に入らないようにバリアをしているわけです。

特に風邪を引いた後は、このセンサーがMAXに活動しています。痰の絡みを感じたら、「私の身体を守ってくれている」と愛おしく思ってください。

これからも病院に行かないで済むように役に立つ、医療情報を発信していきます。

それではまた!

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