コロナウイルス感染自宅療養中、急変して搬送されるケースがあるようです。肺炎に進行しているかどうか、呼吸回数と脈を測ることが最も大事です。急性期の風邪で注意する点を解説していきます。
オミクロン株に感染した人が会社や学校にいたとわかったけど、自分は濃厚接触者にあてはまらない場合に知っておきたい2つの事
まず、大事なこと。咳が出ている期間を考えましょう
風邪をひいて、咳が出始めてから、今どれぐらい経っていますか?これがまず咳の病気を判断する一つの目安になります。
3週以内であれば急性期の咳です。風邪をひいて3週間以内でしたら風邪が治っていないと考えて差し支えありません。
カゼの後の咳は、研究によって15から28日間と幅がありますが、平均17.8日間と報告されています。皆さんが考えるより長く続くのです。
カゼ(上気道炎)の後に咳が長引くのは、ウイルス感染でノドや気管支の気道粘膜表面が敏感になり、少しの刺激で咳が引き起こされやすくなっているのです。
カゼをひくと、ウイルスやほこりなどの異物を気道や肺の隅の方まで入れないように防御して、外から入ってきたものを肺から追い出そうとして咳反射が普段より強くなるわけです。
とにかく咳止めを使い、咳反射を下げることが必要です。
3週間以内の咳では肺炎になっていないかが重要
鼻水がなく、咳や痰、発熱を主な症状とする病気の中で、肺炎でないものを、急性気管支炎と呼びます。
咳のでるカゼのうち肺炎でないものが気管支炎という意味です。
肺炎でないと判断する為には、胸のレントゲンを撮るのが一番分かりやすいと思います。あとは病院で肺の呼吸音を聞いてもらうことでも除外できます。
やっぱり病院行かないとダメなのかと思わないでください。実は肺炎の予測ルールというものがあります。病院に行かなくても家でもある程度判断できます。
咳があるなら熱だけでなく呼吸回数と脈を測ろう
最も重要なものは3つ、体温、呼吸の回数、脈拍数です。体温は最近皆さん良く測っていると思います。
それに加えて是非、呼吸の回数と脈をみましょう。持病の無い70歳以下の方では、体温が37.8度以上、呼吸数が1分間に25回以上、脈拍が1分間に100回以上ある場合には注意が必要です。
迷わず病院に行きましょう。
このDiehrの肺炎ルールは新型コロナウイルス感染には当てはまりません。2021/8/21追記
- 無症状でも低酸素血症を示すようです。 doi.org/10.1093/cid/ciab026
- ブラジルのコロナウイルス感染症入院患者252名の酸素飽和度と心拍数ないし呼吸数の相関を調べた報告です。2021/8/2に発表されています。
- 多くの酸素を必要とする低酸素血症の患者は、心拍数は毎分100拍未満で、呼吸数も毎分20回の未満でした。
酸素飽和度を測るパルスオキシメーターがコロナウイルス感染の呼吸状態把握に不可欠です。
なぜ呼吸数と脈拍が大事なのでしょうか。
もし皆さんが肺炎になった場合、肺の中で酸素が血液中に取り込まれにくくなります。そうすると、私達は苦しくなります。無意識に呼吸の回数を増やして、酸素をいっぱい取り込もうとします。そのため、呼吸の回数が増えるのです。
血液中の少ない酸素を、体全体に十分に送り込むために、普段以上に心臓が早く鼓動し、脈が速くなります。自分が息苦しいと思わなくても、先に体が酸素が足りないことを察知して呼吸の回数と脈を無意識に早くする訳です。
そのため、自覚的な息苦しさよりも、実際に体が苦しく感じているかどうか判断するため、呼吸の回数と脈の回数を調べましょう。
他にわかりやすい事として、肺炎の場合は鼻水やくしゃみが少ないと言った特徴が挙げられます。
持病がある人でも呼吸回数と脈の早さは非常に大事
元々持病を持っている人、70歳以上の方は、やはり早めに医療機関を受診しましょう。感染防止のためにコロナワクチンの予防接種も受けましょう。注意点もこの記事で紹介しています。
昔タバコをたくさん吸っていた慢性閉塞性肺疾患の人は、風邪をきっかけに呼吸状態がすぐに悪化することもあります。糖尿病の持病がある方も、細菌感染に弱いため、気管支炎から肺炎に移行するため注意が必要です。
高齢の方は、夜間の咳や息苦しさが、心不全の最初の症状として出てくる場合があるので、かかりつけ医に受診されるのが良いと思います。
咳に加えて呼吸困難が出たらすぐ病院へ
このように気管支炎、肺炎以外で注意が必要な病気は、必ず咳に加えて、 じっとしている時、動いてる時を問わずに、呼吸困難や呼吸数の増加、顔色が悪くなってきます。
単なる気管支炎で片付けないで病院を受診してください。
この時でもやはり呼吸の回数と脈を測ることが大事です。熱に加えて、呼吸の回数、脈拍も測るような習慣をつけましょう。
新型コロナウイルス感染症で特に注意が必要な、重症化への予兆も、この指標と血液中の酸素量を見て判断しています。
70歳以上の人は風邪になりづらい
高齢者は若い人と比べて風邪にかかる頻度が低いことが言われています。
1960年の古い報告ですか、アメリカのミシガン州における調査によると気道感染症いわゆる風邪に、1年間にかかった回数は、お子さんで6から8回で、年齢と共に低下し、60歳以上では約1回でした。
最近のオーストラリアの全国調査でも気道感染症にかかる人の確率は年齢とともに低くなり、年齢が高くなればなるほど風邪になる確率が低いことが示されています。
なぜ歳をとると風邪をひきにくいのか、いくつかの仮説がありますが、決定的なものはありません。
高齢者は風邪にかかっているお子さんと接することが、お母さん世代よりは圧倒的に少ないため、感染の機会が少ないからではないかと言われています。
また高齢者の方が呼吸器ウイルスに対する免疫力を若い人より持っている可能性が挙げられています。
高齢者は風邪になりにくい訳でなく、こじれているのかも?
東京の5つのクリニックから往診を受けている65歳以上419人を1年間観察した国内研究によると、37.5度以上の発熱の発生率は1000人あたり2.5回でした。400人の3分の1の患者さんが1年間に少なくとも1回は発熱していました。
ただし発熱の原因は、229の発熱のうち肺炎や気管支炎が103回、皮膚や手足の感染症は25回、尿路感染症は22回であり、普通の風邪はわずか13回で5.7パーセントとわずかでした。
この結果は高齢者の風邪が少なかったというものです。
高齢者は風邪を引きづらいという可能性もありますが、普通の風邪だと思ったらだ、実は重大な病気が隠れていたということでもあります。
高齢者は肺炎を起こしていても咳や呼吸困難などの症状が出にくいこともありるのです。発熱で転倒したとか、食欲不振から脱水になり意識障害で受診されたが、実は肺炎だったということもあります。
やっぱり高齢者のコロナウイルス感染の重症化に注意が必要
高齢者は、単なる風邪で終わらずに肺炎など重篤になりやすい。
つまり、風邪だけの状態で終わらずに、こじれているということかもしれません。
やはり高齢者はウイルス感染症により重症化する割合が高いため注意しましょう。
いつもの風邪とちょっと違った様子だとか、肩で息をしている、苦しそうだ、このような場合は躊躇せず病院を受診してください。
急性の咳は呼吸回数を、3週以上続く咳は別コラムで
風邪の時の3週以内の咳は、肺炎を注意し、呼吸数、脈拍数を指標にしましょう。高齢者ではそれ以外に、いつもと様子が違わないかもよく見ておきましょう。
3週以上の慢性的な咳については、また別の記事↓でお話します。