舌の痛みの3大原因を解説。原因不明のものは舌痛症。神経障害性疼痛で治療には根気が必要です。

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富田耳鼻科@新発田市

富田雅彦:耳鼻科クリニックの医師です。
富田耳鼻科クリニック@新潟県新発田市舟入町3丁目11-18-7

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舌の前方3分の2を中心に、痛みを感じたり、ヒリヒリするただれたような痛みを感じている人。歯科に行っても歯は問題ないといわれた、精神的なストレスではと言われた方へ。舌痛症について解説します。耳鼻咽喉科受診をお勧めします。

舌の痛みの病気の中で、検査したけど、原因がわからないものを舌痛症という

この原因がわからない舌痛症の頻度は10-20%程度といわれています。舌が痛いと訴え、大学病院歯科口腔外科外来を受診した104名の報告があります。

舌痛などの舌症状を主訴とする患者の臨床統計学的検討-舌痛症の特異性について-
J-STAGE

女性が9割を占め、平均年齢は68歳でした。原因がない舌痛症と診断されたのは、16例15.4%でした。

舌の痛みが何もしていないときに増すかどうかを確認

原因がない舌痛症に特徴的なのは、何もしていない時に痛みが増すということです。会話やご飯を食べている時、他のことに集中している間には痛みが和らぎます。

口内炎のように、舌そのものに痛みの原因があれば、舌に何かが触ったときは痛みが増すはずです。舌癌など、舌に腫瘍があれば、痛すぎて睡眠が障害されるようなことも起こります。

原因のない舌痛症ではこのようなことは起こりません。

舌痛症は、口腔灼熱症候群(バーニングマウス症候群)の一種という考えも出てきています。

診断基準には、連日かつ2時間以上にわたって反復する痛みが3か月以上続いている。口腔粘膜の外観は正常で、検査は正常である。などと記載されています。

つまり痛みの原因がないということです。

原因のある舌痛症:舌の痛みの3大原因

それでは、大多数を占める、原因のある舌の痛みで、頻度の多いものを説明します。

舌磨きのしすぎ、口の渇きによる舌表面のうるおい不足

舌の違和感が気になって、鏡で舌をみたら白くなっているとか割れていると気づいた。

それから舌の表面を歯ブラシで磨き始めた。そうしたら痛みが強くなったと受診される人は多いです。

舌の表面のうるおいをなくしているのです。

舌苔は口臭の原因とされていますが間違いです。以下の記事も参考にしてください。

他には、唾液減少によるドライマウスです。高齢者に多くみられる加齢性変化です。これも舌の表面を傷めます。

若い方でも、慢性的ストレスにより交感神経が優位になり、唾液減少を引き起こす事もあります。

舌表面にカビが生えてしまう:カンジタ症

口の中にカビ、つまりカンジタが感染すると、痛みがでてきます。

舌が黒くなったり、苦く感じたりする場合とともに、痛みも伴います。

舌の細菌検査を行うとカンジダが検出され、診断されます。

そのほかに口腔乾燥があったり、義歯を使っていると、カンジタ感染の可能性が高くなります。

粘膜の下に感染すると、舌表面が赤くなります。

この様に、高齢者の舌の痛みにはカンジタ感染に対する、薬を使うことで改善する場合があるのです。

先の大学病院の報告では、104例中、実に59例にカンジタ感染が見つかっています。

このうち41例は舌の見た目では、異常はなかったとのことです。

正常に見えてもカンジタ菌が隠れている場合も多いようですので、検査をしてもらいましょう。

舌の細胞の栄養分である、亜鉛やビタミンB12不足

舌の細胞の栄養分としてミネラルやビタミンが重要です。

特に亜鉛は、舌の細胞に最も必要で味覚障害の治療にも使われます。この欠乏も、味覚障害以外に、舌の痛みを引き起こします。

舌の痛みを訴えて、大学病院耳鼻咽喉科を受診した53例の報告があります。

舌痛症と亜鉛欠乏症
J-STAGE

26例が低亜鉛血症もしくは潜在性の亜鉛欠乏を示す高銅血症でした。このうち10例で亜鉛補充のみを行ったところ、7例で、舌の痛みが消失したそうです

ビタミンや葉酸の欠乏によっても舌の炎症を引き起こし、痛みを感じます。

典型的なものは、手術で胃を切除した場合です。数年後にビタミンの欠乏を起こします。

最も、手術をした病院でビタミンの注射を定期的に行い予防している方が多いと思います。

手術をした事がなくても、慢性的に胃が萎縮した場合や、胃酸分泌を抑制する薬を飲んでいる場合にも起こり得ます。

こちらも検査をしてもらう必要があるかもしれません。

原因のない舌痛症は、以前は心の病、今は神経障害性疼痛です

それでは、上記のような原因がなかった10から20パーセントを占める、舌痛症はどうすればよいのでしょうか。

原因がないから多くは心の病とされていました。

実際に、原因のない舌痛症は、不安障害やうつなどの人に多く認められていたのです。更に抗うつ剤が効果があった人もいたからです。

しかし最近は、神経障害性疼痛の可能性が言われています。

神経が何らかの原因で傷ついて、舌そのものが敏感になっているのです。そして舌から痛みの信号が出過ぎて、脳が過敏に痛みの情報に反応しすぎている状態なのです。

舌痛症の人の舌の細胞の一部を細胞の検査をした研究者がいます。

その研究によると、舌粘膜の表面では、神経線維の形が変わっていたそうです。更に、それを修復しようと神経成長因子が集まっていることが発見されています。

抗うつ薬、漢方治療や認知行動療法が効果ある場合も

原因のない舌痛症には、通常の鎮痛薬は効果がありません。神経障害性疼痛に対する治療を行います。漢方薬も多種効果があると言われています。

抗うつ薬やセロトニン再取込阻害薬、セロトニンノルアドレナリン再取込阻害薬などを行います。抗てんかん薬など脳内の神経回路のエラーで痛みが起りうるということで、うつやてんかんの薬を使用するわけです。

脳が舌の痛みを記憶してしまい、痛みを感じる神経回路ができてしまうことが原因になっているという考えです。そういう意味では、心理療法や認知行動療法など、心療内科での治療も有効です。

歯科では、血液検査や薬剤処方に制限があるので耳鼻咽喉科受診を勧めます

舌の痛みを100%消失させることは難しい場合もあります。生活に支障のない範囲で痛みと共存していくというスタンスは必要かもしれません。

舌の痛みがあった場合は、抗うつ剤等は歯科では処方できないため、耳鼻咽喉科受診を勧めます。歯科で歯周病や虫歯がないと言われたら、尚さらです。

まず原因がある舌の痛みを診断し、治療を行います。異常がないといわれた舌の痛みにも対応していきます。

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