舌が白いけど取れない。なぜならその舌苔は舌の細胞そのものだから。その舌を磨くのは、皮膚の垢すりと同じ。口臭は舌苔が原因ではありません。

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富田耳鼻科@新発田市

耳鼻科クリニックの医師です。
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舌の表面の白いものが気になる方へ。毎日舌をこする必要はありません。なぜなら舌表面の細胞そのものだから、ヤスリで体を削っているようなものですよ。舌苔について解説します。

舌苔は舌の細胞(糸状乳頭)からできた垢のようなもの(角化上皮)が剥がれ落ちる寸前のもの。

皮膚や舌では、深部から表面に向かって細胞が成長していきます。これを角化といいます。

ただし細胞増殖に必要な栄養と酸素は、深部の血管から血管のない表面に向かって広がります。深部の細胞は、栄養血管の最も近くにあるので、ほとんどの栄養と酸素を受け取っています。そして細胞分裂を行いながら表面に向かって角化していきます。

新しい角化した細胞は表面にあり、深部の血管から離れるので、細胞まで届く栄養が減ります。このため表面にある角化細胞が栄養不足となって死にます。

最終的に表面の角化細胞は剥がれ落ちてしまします。この剥がれ落ちた角化した細胞は、皮膚であれば垢といい、頭皮であればフケと呼ばれます。

舌の場合は舌苔といわれます。つまり表面の角化細胞の剥がれる寸前のモノが舌苔なのです。舌に存在する4種類の細胞のうち角化して剥がれ落ちるものは糸状乳頭といい、舌の背部に存在しています

健常の成人60名の舌の表面をマイクロスコープによって観察した結果が(参考文献)あります。これによれば角化層の厚みがあると、舌苔が厚く黄色になる傾向が分かっています。

舌苔は食事の食べカスであるとも言われますが、間違いです。前日夕食後に歯を磨いて、翌朝に舌の表面を観察した先の60名の報告では、舌苔には食べ物のカスはついていませんでした。

口臭は舌苔の付着量(舌の白さ)と関係なく、舌苔に付着する細菌の量と関係する。

大学病院の口臭専門外来を受診した、全身の病気がない110名の報告があります。明らかに口臭を認める人の舌苔を調べると、厚い舌苔を持っていた人は3割程度でした。

たしかに舌苔の付着量が多くなると、口臭が強くなる傾向はありました。しかし口臭を認めない人でも舌苔を持っている人の割合は4割いました。明らかに口臭を認める人でも、薄い舌苔の人は15%もおり舌苔=口臭の原因とは、はっきり言えないのです。

口臭は、舌苔そのものが問題ではありません。舌苔の隙間の細菌が問題となります。先ほどの110名の報告では、電子顕微鏡で舌苔表面のでこぼこ(角化上皮)を観察すると、隙間に細菌層を作っていることがわかっています。舌苔によって、細菌層がある場合と角化上皮のみの場合など様々に異なっていました。

舌苔が口臭の原因ではなく、舌苔内の細菌から臭いが発生する場合が考えられます。

舌ブラシで舌苔を削ることは、正常な舌を傷つけるから厳禁

舌ブラシで口臭を抑える報告は実は多くはありません。大学病院での舌みがきによる口臭抑制効果についての報告を紹介します。

学生や職員を含む110名を調べています。そのうち23名に舌苔が付着していました。舌みがきを一ヶ月続けた結果、2名で舌苔が不変、21名で舌苔が減少しました。歯科衛生士2名が口腔内の匂いをかぎ取り数値で判定した口臭については、舌磨き後に16名が改善を認めています。

舌の表面の 細菌の付着する場である舌苔を削ることにより、細菌が減り口臭が減ったと考えられます。 ただし舌苔はもともと舌をコーティングするためのもので必要不可欠なものです。清掃しても取れなかった人もいます。その清掃してもとれない舌苔は剥がれ落ちていない舌細胞そのものであったと思われます。

さらに舌苔付着の23名には、舌掃除のアンケートもされています。舌苔が取れたと感じた人は11名でしたが、一方で舌がヒリヒリすると言った人が3名、吐きっぽくなると言った人が10名いました。

舌表面の汚れは、食事をしていれば自然に取れているので残っている舌苔は必要なもの

実際のところ以下の報告では、舌をこすっても舌苔が取れないものがほとんどでした。舌苔は、舌の細胞そのもので舌に必要なものですから当然のことです。

大学病院の口腔外科に一般歯科診療を目的として来院した患者の舌表面を調べた研究です。昭和53年の研究でやや古いのですが、3年間の患者の中から無作為に4861名抽出しています。舌苔を認めた人は82例、1.69%でした。このうち、こすって簡単に舌苔がとれたのは、わずか3名でした。大多数の者が擦ってもなかなか取れないというものでした。

舌苔のある人とない人で、プラークや歯石の付着の有無で、口の中の清掃を行っているかどうかを確認すると、口の清掃程度と舌苔付着度は関係ありませんでした。

細菌自体はもちろん、舌苔が少なければ、舌苔に存在しづらくなります。しかし、舌の表面に潤いをもち、唾液が分泌され、舌表面をキレイにする方がより細菌減少に有用だと思われます。

舌表面をキレイにするためには、柔らかいものではなく硬い食物をよく噛んで、ベロの表面が適度に食物で刺激されること、唾液を多く分泌して舌表面をキレイにすること、つまり食べるという行為自体が重要になります。

胃腸の悪い人は舌苔が厚い

実際のところ、食事に影響を及ぼしたかもしれない消化器疾患の人には舌苔が付着しやすいと言われています。

先に示した報告では、内科受診中、または上部消化管内視鏡検査にて診断の確定している、消化器疾患のある患者さん325例の口の中の状態も確認しています。173例53.8%で舌苔が付着していて、消化器疾患の無い場合より舌苔の付着率が高くなっています。

食欲不振や気持ち悪さなどの消化器の自覚症状を訴えた人では、舌苔の付着率が54-71%でした。一方自覚症状のなかった人では、舌苔付着率は39.1%と低値でした。

消化器症状のある場合、通常食の摂取量が落ちたり、柔らかいものを食べたりすることによって、舌苔が付きやすいのかもしれません。もしくは、消化器疾患に対して薬を飲むことが多くなり、唾液分泌が少なくなったり、抗菌薬による口の中の細菌組成が変わることなどで舌苔が剝がれにくくなるのかもしれません。

まとめ:舌苔はあっても良いから舌に潤いを

介護されている高齢者のように、柔らかい食事を取っているか、自分で食事を積極的にとれない人、自分で歯がきれいに磨けない人については、口腔ケアの一環として上顎から舌まで拭うように掃除をするべきだと思います。

しかしながら、生活が自立していて、なんでも食事が取れる人は、歯磨きだけで十分であり、積極的に舌をブラシなどで掃除をする必要はないと考えます。 

舌全体がヒリヒリすると言って当院を受診される患者さんは多いです。そのような患者さんは、パッと見ると舌自体が真っ赤になっていて、舌苔もなくむしろ舌表面の潤いがないと感じることが多いです。

舌を磨くことをしていませんか?と聞くと歯磨きの後に歯ブラシで掃除していますと答えられる人が多いです。舌が白いのが気になるので、これを取るために擦っているとのことです。舌みがきをやめてもらうと2週間から1ヶ月で舌がひりひりするという症状が良くなる人が多いです。

舌苔はあってはいけないものという思い込みから解放されましょう。歯磨き後のうがいだけで十分舌の表面はキレイになると思います。

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