コロナウイルスなどのウイルス感染症の鼻水に、抗アレルギー剤を飲んでも効果がありませんよ

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富田耳鼻科@新発田市

富田雅彦:耳鼻科クリニックの医師です。
富田耳鼻科クリニック@新潟県新発田市舟入町3丁目11-18-7

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 風邪などのウイルスに効く薬するは、現在のところ抗インフルエンザウイルス薬しかありません。それでも、本記事では、カゼの症状を和らげるために最善の方法を紹介します

解熱剤を飲んでも良いのでしょうか

 『熱はウイルスと戦っているために上がるので、無理に下げるとよくないですよ』という医師がいます。言われると納得しちゃいますね。実際は下げても問題はなさそうという見解です。ただしアセトアミノフェンという種類だけにしておきましょうね。ということで特にお子さんに対しては、昔はボルタレンという座薬がよく使われていましたが、いまはカロナールやアンヒバというアセトアミノフェン一辺倒になっています。

  ICUに入った、発熱のある重症の患者さんに解熱剤(アセトアミノフェン)を使っても使わなくても治るスピード(ICUからでて一般病棟へ行くまでの日数)は変わらなかったと報告されています。さらにインフルエンザでは動物実験においてロキソニン(アセトアミノフェン以外の解熱剤)などが感染を悪化させ死亡率を上げた報告があります。

  このように解熱剤についてはロキソニンやイブプロフェンなどの種類ではなく、アセトアミノフェンの成分が入っているもののみが勧められています。市販の頭痛薬や痛み止めなどではアセトアミノフェン以外の種類も入っていますので解熱剤として使用するには注意が必要です。

風邪の鼻水に対して、抗アレルギー剤(抗ヒスタミン薬)と言われるものは効かない

 『風邪に対する抗ヒスタミン薬』という題名のレビュー(数種類の論文をまとめて効果を確認した報告)では、抗ヒスタミン薬は鼻炎症状を初日と2日目のみ抑える可能性があるものの、3日以上経過すると効果がないとしています。しかもこの報告のほとんどは第一世代の抗ヒスタミン薬にあたります。市販の風邪薬に入っている成分は、第1世代抗ヒスタミン製剤です。この薬は抗ヒスタミン作用ではなく、抗コリン作用があるため、風邪には効果があると考えられます。抗ヒスタミン薬については、別記事にまとめておりますので、興味がある方はどうぞ読んでみてください。

アレルギー症状を抑える為の市販薬アレルギー剤を医師がランキングしてみた。医学的根拠は鼻アレルギー診療ガイドライン
当記事は、アレルギー性鼻炎や花粉症に対する症状抑制効果が認められている市販薬の特集です。日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会が制定した「鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版」に準拠しています。この記事の構成は、内科総合クリニック人形町で紹介
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 ただし、副作用がありますのでそれとも、兼ね合いで飲むべきかどうかを決めるべきだと思います。当院では副作用を懸念し、第1世代の抗アレルギー剤はカゼの方はもちろん、アレルギー性鼻炎の方にも投与しておりません。子供さんでは痙攣を引き起こす可能性があると分かっていますし、ご高齢の方では、おしっこが出なくなるとか口が乾くという症状が強く出る可能性があるためです。

 別な報告では、アレルギー性鼻炎を元々持っている方が風邪をひいた場合は、抗ヒスタミン薬も半数で鼻水を抑えると報告されています。そのため非鎮静第二世代抗ヒスタミン薬に限って内服しても良いと考えられますし、当院でも処方しています。

鼻水が黄色くなってきたので抗菌剤が必要⁉

 風邪をひいた時に、鼻やノドなど炎症があるところからサイトカインという物質がたくさん出てきます。このサイトカインは病気と闘うために出ているものです。このなかでIL-8という物質が白血球の好中球を集めてウイルスや細菌などと闘います。この戦いで好中球が死ぬと、好中球の細胞の中に元々もあるアズール顆粒という色のついた物質が漏れ出てくるのです。これが膿の色の正体です。鼻水以外にも怪我をした部分の膿なども、この好中球の死骸の色なのです。膿色は細菌感染にかぎらずウイルス感染による炎症部に見られますので、抗菌剤の必要かどうかと痰や鼻水の色は全く関係のないものなのです。

  抗菌剤の必要な状態ももちろんあり得ます。それはウイルス感染の後で遅れて細菌が感染した来た場合です。2次感染と言われるものになります。風邪をひいて発熱がしてから10日から2週間ぐらいでまた症状が悪化したとか熱が出た場合などは細菌感染と考えられ、抗菌剤が必要な場合があります。

医師の診療で病気が治ると感じる人が多くいるし、実際に免疫も上がるかもしれません

  日本のアンケート調査で、風邪症状が出た時に病院にかかって医師に診察されてなんとなく良くなった気がする人は91%もいて、実際早く良くなったと思う人は59.5%にのぼります。市販薬を飲んでも効果がなかったと感じている人は56%ですから医師の診察の有用性が感じられます。実際に病院で出る薬は症状を抑える薬であって、風邪を治すものではありません。それでも病院にかかることによって安心を得られていることが大きいのではないでしょうか。

  アメリカの大学の研究でも719名の風邪の患者さんに対する調査で同じ結果でした。同じ医療を受けていたとしても信頼される医師から共感的な態度で長い時間診療をうけると、治療の効果を感じるというものでした。この調査では同時に病気に対する免疫応答の指標であるIL-8と白血球数を調べており、有意ではなかったものの診察を受けた患者さんで高くなっている傾向(免疫がアップした)がありました。つまり気のせいだけではなかったのです。

  風邪をひいてコロナウイルスではないかとビクビク感じていて、ストレスを溜めながらしっかり休息できないという時に病院にかかったり、検査をすることで、安心する。その病気が何であるかがわかることで病気が早く治るという効果はあるかもしれませんね。人間は不安やストレスを感じた時に、行動することによってそれらを解消すると良いと言われています。風邪をひいて悶々として、ネットサーフィンをするより、どこかの病院にかかり、なにかしら行動することも良いかもしれません。

  当院はコロナウイルス感染症のPCR検査を積極的に行っています。風邪症状があって、コロナウイルスを疑う場合は、もちろん保険診療と公費負担で行っています。

結局のところ食事と睡眠が大事

  のどが痛くてご飯が食べられない。であれば痛みを取って食事や水分を補給することが大事でしょう。咳が夜にひどくて眠られないのであれば、咳止めで睡眠時間を長くできるようにすることは重要でしょう。やはり症状を和らげるために何かしらのことを行うことはよいのではないでしょうか。それがはちみつであったり、生姜汁であったりおばあちゃんの知恵袋のようなことでもよいと考えます。

 睡眠も推奨されます。スタンフォード大学のバスケットボール部の部員に睡眠を十分とるようにしたところ、シュート成功率やダッシュのスピードが明らかに上昇したという2011年の発表から睡眠研究はアメリカでは盛んに行われています。これらによると睡眠不足が免疫応答を下げる報告も多数あります。ウイルス感染後に発症するか体内で増幅するかは免疫によるとおもいます。ウイルスを鼻に投与した人を解析すると、睡眠不足が1週間続くと有意に風邪症状の発症を高めていたそうです。最低7時間、可能なら8時間の睡眠を日々取ることが、マスクや手洗い以上の感染発症予防になると思われます。

まとめ:風邪を引いたらどうするべきか

①解熱剤を使うならアセトアミノフェン

②抗ヒスタミン薬はアレルギー性鼻炎をお持ちの方にのみ

③抗菌剤(抗生物質)が必要になる例はわずか

④病院受診して優しい先生に見てもらいましょう

⑤睡眠時間を普段から確保しよう

参考文献:

1. Acetaminophen for Fever in Critically Ill Patients with Suspected Infection

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26436473/

2. Antihistamines for the common cold

https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD009345.pub2/full

3.Perception of Empathy in the Therapeutic Encounter: Effects on the Common Cold

Patient Educ Couns. 2011 Dec; 85(3): 390–397.

風邪が治っても長引く咳についてはこちらの記事も参考に

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