子どもの咳は救急対応が必要な4つを除外できれば、普通の風邪の咳と考えて問題ありません。

2歳の子供が夜に咳込んで、ゲボして眠れない。風邪の咳で良いのでしょうか。救急外来にいくべきアナフィラキシー、気道異物、クループ、喘息発作以外なら3歳未満の咳は、普通の風邪の咳です。咳を良くする方法について解説します。

この記事を書いた人

富田雅彦:耳鼻咽喉科専門医:ドクターズファイル

めまい平衡医学会認定めまい相談医

病院に受診しないために自分で判断できるような医療知識を発信中

YouTube:耳鼻科医富田のいいみみチャンネル

富田耳鼻科クリニック@新潟県新発田市舟入町3丁目11-18-7

小児の咳嗽診療ガイドライン2020を参考に記事をまとめています。

ガイドラインによれば、3歳未満で注意すべき咳は6つ。

アナフィラキシー、気道異物、クループ、喘息発作、急性喉頭蓋炎、百日咳です。

このうち頻度が高いものは、クループと喘息発作、急を要するものは、アナフィラキシーと気道異物、急性喉頭蓋炎です。

すべてにおいて呼吸困難、顔が真っ青になる、いつもと違うという状態になります。この場合は救急外来を受診しましょう。

これ以外の咳は風邪によるものと考えて問題ありません。

風邪を引いて1週間、ずっと咳をしているのだけどなにか違う病気?と思われる方も多いです。

目次

子供の咳は、半分は10日間続く

風邪の症状がどのくらいの日数で治るかを調べた研究があります。

様々な子供の咳に対する論文を12件分集めてまとめた報告です。

このうち咳の症状が無くなるまで調べたのは6件です 。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3898587/

 風邪を引いた場合の46%の人で咳症状がありました。1日目に最も多く訴えていました。

その咳症状は、症状出現後半分の50%が、10日目で改善していました。更に90%の人が改善するまでには25日もかかっていました。

皆さんが思っているよりも意外に咳症状が続くのが長いということがお分かりいただけと思います。

咳は完全にないよりはあった方が良いもの

実際のところ、咳は気管や肺に入ろうとする異物や病原菌などを排除するための防御反応です。

そのため、全く咳がないとその異物が肺の底まで入り込みます。

咳がないと重症の肺炎を引き起こしやすくなりますので、咳はないよりはあったほうがいいと思います。 

そうは言っても、お子さんが寝ている時に咳込んで、あんまりにひどいと咳しすぎてゲボしてしまう。

苦しそうで眠れなかった。このように心配するご両親も多いと思います。

何か良い方法はないのでしょうか。

病院ではアスベリンという咳止めが出ることが多いです。

ツロブテロールテープは喘息の薬で咳止めテープではありません。

ホクナリンテープという気管支拡張剤を咳を止める貼り薬と思っている親御さんがいますが、これは間違いです。

ツロブテロールテープともいわれますが、喘息の薬です。

喘息からくる呼吸のしづらさには効果がありますが、風邪の咳には効果はありません。

喘息をお持ちのお子さんの風邪に使うのはよいですが、咳止めではないので注意が必要です。

咳に効果があるのは、蜂蜜くらい。でも1歳超えるまでは禁止です。

正直、咳に対して研究などで明確有効とされている治療はありません。

はちみつが咳に対して効果があるというものはとてもよく聞きます。

しかし、一歳未満には絶対に与えてはなりません。はちみつの中に含まれている可能性のあるボツリヌス菌を腸内で殺すことができないからです。

ご両親の禁煙は、お子さんの風邪や咳予防に非常に有効ということは証明されています。

両親が喫煙している場合、子供の喘息のリスクを1.2倍、咳のリスクを1.4倍にするという報告です。

親の禁煙で子供の咳が治った風邪をひきにくくなったと言う話はよくあります。 

病院に行って1週間薬をもらったのに風邪が治らない

当院は耳鼻科ですが、『子供が風邪を引いて、小児科にかかって1週間薬飲んだけど治らないので、耳鼻科に来た。』こういうお母さんは結構いらっしゃいます。

これは風邪のなおるまでの期間を考えると『あるある』の出来事です。

お子さんのウイルス感染の風邪の症状をスコア化してどれくらいで治っているのかを調べた研究があります。

平均年齢5.2歳の290人の子供達を調べたカナダからの報告です。

https://dx.doi.org/10.1136%2Fbmj.327.7423.1088

大体の皆さんが、お子さんの風邪症状が発生してから、病院に平均3日目で受診しています。

お子さんが病院を受診してから4日目に、44%の子どもたちが回復をしています。

病院受診後7日目には75%が回復していました。

先ほど例に挙げた、小児科の薬1週間でなおらず耳鼻科に来たというパターンになる可能性は25%ということが言えますね。

ちなみに病院受診後、2週間目には90%が回復していました。

耳鼻科に来たら治ったというパターンになるわけです。耳鼻科医が腕がいいわけでなく、1週目から2週目に自然に治ったと言えます。

風邪症状がでて3日目で病院に受診、その後7日目で治るお子さんが75%です。つまり風邪症状後10日間で75%のお子さんの風邪が治っているわけです。

1/4はそこまで来てもまだ治っていません.

そうこうしているうちに、お子さんは、再び新たな風邪を引く可能性もあります。

乳幼児は1年に平均6から8回風邪にかかると言われています。

保育園に通っていたり兄弟がいたりすれば毎月のように風邪を引くケースも多いです。

それでも出来ることは無いの?と言われる方へ。お子さんの鼻吸引をオススメします。

鼻吸引は、カゼを早く治します

鼻吸引は風邪の症状を軽くし、風邪症状の期間を短縮することが研究で分かっています。

https://ijponline.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13052-018-0489-6

2歳半を中心に1歳半から5歳までの89人の子供達を鼻吸引ありと無しに分けて調べています。

鼻吸引を行ってネブライザーをする子供たち、鼻吸引を行わずにネブライザーをする子供たち、この二つの群に分けて、喘息の発症や風邪の引きやすさを比べました。 

鼻の吸引をよくすることで、喘息の発作止め薬の使用頻度が少なくなりました。

更に鼻の吸引によって鼻の中を適切に綺麗にすることで、就学前の子どもたちの風邪の症状が軽くなりました。

特に鼻水と咳症状がでている日数が減少しました。

鼻吸引が難しければ耳鼻科でしてもらいましょう。

鼻吸引は簡単に行えますでしょうか?親御さんに今回の研究 で鼻吸引が簡単かどうかについてい質問をしています。

鼻の分泌物除去が完全もしくは部分的に成功したと7割の人が評価しています

鼻の吸引に対して、子供は問題なかったかという質問に6割の人は問題なかったと訴えています。4割の人はいくつか問題があると訴えています。

この研究では1歳半から5歳までの広い年齢層でした。しかし3歳未満の乳児には鼻吸引は難しいと思われます。

きれいに鼻水を除去することができれば風邪の予防にもなります。

早く風邪を良くしたい場合などは耳鼻科を受診し鼻を吸引してもらうのも有用です。

当院では、毎日鼻吸引に来られるお子さんもいらっしゃいますので、小児科からの薬があっても鼻吸引しに耳鼻科に来てください。

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