首にしこり?腫れて痛みがある。風邪引いたからかしら。原因は感染?何、リンパ腫だったらどうしよう。

首にしこりが触ったときに考えるべきことをお話しします。悪性リンパ腫や癌の転移で言われるリンパについても触れます。

目次

リンパは全身をめぐってリンパ系を形成

細胞が生きていくのに酸素が必要なことは皆さんは知っていると思います。そしてこの酸素は動脈内の赤血球で全身の細胞に運ばれています。そして使われた酸素は二酸化炭素になり、今度は静脈系を通って心臓に戻ってきます。では全身に動脈で供給された栄養分はどうなるのでしょうか。細胞で使われた老廃物の8割は、血管に再吸収され静脈系で心臓まで戻ってきます。残りの2割はリンパ管という、リンパ液が満たされた管で全身から回収され、鎖骨のあたりで静脈系に注ぎます。これをリンパ系といいます。

リンパ管は髪の毛くらい細い

リンパ系は動脈静脈の心臓というポンプを使った循環ではなく、周りの組織の影響をうけながら、流れを作って全身を巡っています。リンパ管は髪の毛くらいの細さで脂肪に紛れ透明なので手術でも血管より細く目視ができにくいくらいです。そのため、リンパ管は周りの組織の影響を受けやすいのです。

リンパの流れは、体が動いて筋肉が動くとその隙間にあるリンパ管の壁が外側から押されて、リンパ液が流れます。ずっと同じ体勢で長く立っていると足がむくむのは、リンパが流れずリンパ液が溜まるためです。深呼吸をして胸を動かしたり、気張ったり、踏ん張ったり、血圧を上げることでも、血管の隣にあるリンパ管の壁が押されて、リンパ液の流れが活発になります。リンパマッサージといわれる老廃物を排出する手技も、リンパ管が外側の環境に影響をうけ流れを作る性質があるからこそ行われるわけです。

リンパ系の作用は、老廃物の除去、脂肪運搬、免疫応答の3つ

このリンパの作用は3つあります。組織の老廃物を取り除くこと、腸で消化吸収された脂肪などの栄養分を太い静脈へ流し全身へ巡らすこと、免疫担当の細胞を作り全身に運びリンパ節などで異物と戦うことです。

首の腫れものや、癌のリンパ節転移などで、リンパが腫れるといわれるのは、免疫担当細胞が異物が体の中に入ってい来るのを食い止める活動によるものです。リンパ節は米粒のような大きさで数珠のように存在していて、全身に数百か所存在しています。

リンパ節は病気の元になる異物や癌細胞を免疫で抑え込む主戦場

リンパ節転移

消化管やノドなどの癌細胞があったときに、臓器からあふれ出た癌細胞がリンパの流れに乗ります。これを近くのリンパ節で、リンパ球などの免疫細胞が癌細胞をせき止め壊そうと戦います。敗れた場合にリンパ組織の中が癌細胞で壊され、リンパ節が腫れてきます。これが癌の転移や悪性リンパ腫でリンパが腫れるという状況です。

リンパ節炎

一方でリンパ節は外から入ってきた異物、つまり細菌やウイルスに対しても、リンパ球が集まり戦います。この場合リンパ節自体が赤くなったり腫れあがり痛みを伴います。これがリンパ節炎という状態です。この場合、免疫の反応が収まった時にリンパ節の腫れは小さくなります。鼻や喉は外側の人間にとっての外敵の最初の受け手になるため、喉や首にはリンパの組織が発達し、外からの異物細菌ウイルスと戦うため、リンパ球が集まる組織がたくさん存在している訳です

首の腫れものが大きくなった時には、リンパ節炎によるものかリンパ節転移によるものかは大きさだけでは判断しきれません。そこで次にあげるような悪性を疑う目安というものが考えられています。

首の腫れものは、どれくらい前からあるか、おおきくなっているか、いたみがあるかをチェック

  2017年にアメリカ耳鼻咽喉科学会が首(頭頸部)の腫れやしこり(腫瘤)に対するガイドラインを作っています。これは医療者向けではなく一般の患者さんやその家族向けにつくられています。そのため重要な病気を見逃さないという観点から、基本的に成人の頸部の腫瘤は悪性を疑いなさいと書かれています。

悪性腫瘍を強く疑う条件として以下の5つが挙げられています。これを解説していきます。

1. 感染が疑わしくない

2. 2週間以上 期間がわからないというものも含む 

3. 固くて動きが悪い

4. 1.5 CM 以上の結節

5. 皮膚の潰瘍 

感染が疑わしくない

感染を起こすと炎症がおこります。痛みを強く感じるはずです。さらに首の皮膚回りが赤くなります。感染を起こす原因、つまり疲れや風邪症状、しこりを触ったりしたエピソードがあるかもしれません。

2週間以上腫れが続いている。(期間がわからないというものも含む)

いつから首の腫れが存在しているかということは、かなり大事な情報です。リンパ節炎などの炎症であれば一時的に大きくなっても段々と小さくなるはずです。その腫れへの感染などで炎症が起こり、炎症反応が落ち着くのに2週間が目安となります。いつからかはわからないというのは短期間ではない、急に大きくなったものではないということになります。炎症であれば急に大きくなることが多いのです。稀ですが超悪性の腫瘍で急に大きくなるものもあります。

硬くて動きが悪い

悪性の腫瘍は、周りにどんどん浸食していきます。皮を破って大きくなるイメージです。通常リンパ節であってもデキモノであっても被膜といわれる果物の皮みたいなものがあります。悪性の細胞は正常な細胞を破壊していくため、この皮も破るわけです。皮をやぶったものは触るとゴツゴツ岩のような硬い感じになります。この皮を破ったものは周りの組織にくいこんでハマりこむので周りから動かなくなるのです。

1.5㎝以上の腫れもの(結節)

悪性のものは大きくなる傾向にありますし、自然に小さくなりませんので、ほっておけばどんどん大きくなります。炎症による腫れはそこまでおおきくならずその目安が1.5センチつまり15ミリです。炎症でもそれ以上に大きくなることはありますが、1.5センチ以下で収まることが多いという意味です。

皮膚の潰瘍

悪性腫瘍は前にお話しした通り、被膜つまり皮を破って増殖していきます。これには皮膚も当てはまります。皮膚を突き破って体の外側にでてくるのです。これを外表からみると潰瘍となるのです。皮を破って身が出てきた果物、腐った果物みたいな感じになるのです。

これらに5つの条件に加えて付加条件2つもあります。より強く悪性を疑って受診しましょうということだと思います。

年齢40歳以上、タバコやアルコールをする。痛みのないできもの。

若い人の悪性腫瘍は滅多にいません。タバコとアルコールは悪性腫瘍の発生リスクを高めます。こういう方は悪性の可能性が上がるということになります。

悪性腫瘍そのものは痛みを最初は感じません。被膜に囲まれている間は痛みの神経に影響が及ばないからです。皮を破って中身が、まわりにある痛みを感じる部分に触れたときに痛みを感じます。そのため大きくなったり皮を破壊したときに痛みを感じてきます。炎症では炎症自体が痛みを発するのです。そのため痛みのないデキモノは逆に悪性を疑う必要もあるのです。

やはり悪性腫瘍かどうかは病院へ

  痛みや違和感など感覚的なものの病気と違い、シコリや腫れものがあるということは、現代医学が最も得意とするものです。CTやMRIなどの画像検査などはすべて固形のものを見つけるのに極めて有用です。様子をみていい腫れものかどうかを判定してもらうためにクリニックや病院を受診してみてください。しこりが良性か悪性かは厳密には手術で全部取ってみないとわかりません。それでも様子みれるのか、治療を急ぐ病気なのかどうかは受診すれば、ある程度わかります。

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