抗生物質が市販されていないのは薬物乱用を防ぐため。腸内細菌叢を壊すので抗生物質は必要最小限に。

抗生物質(正式には抗菌剤)を服用すると腸内細菌叢を壊し、下痢を引き起こします。腸内細菌叢の善玉菌を増やす有用性について解説します。

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富田雅彦:耳鼻咽喉科専門医: ドクターズファイル

病院に受診しないために役立つ医療知識を発信中

富田耳鼻科クリニック@新潟県新発田市舟入町3丁目11-18-7

目次

抗生物質の乱用は、腸内細菌叢の善玉菌を壊して身体に悪影響を及ぼす

抗生物質が市販されていないのは薬物乱用を引き起こし、結果的に薬物耐性菌の問題がでてくるからです。

医師が処方する場合であっても、不必要な抗生物質の処方や間違った処方の仕方により耐性菌が問題となっています。

耐性菌の話は、別の機会にお話しするとして、今回は抗生物質(正式には抗菌剤といいますので以後抗菌剤)治療が人体に有用な腸内細菌叢をかき乱す悪影響について解説します。

抗菌剤は おなかの中の腸内細菌叢の善玉菌を壊し下痢の原因になります。必要もないのにむやみに抗菌剤を飲むと大変危険です。

幼少期にたくさんの抗菌剤を出されたようなタイプの子供達は、心身の具合が悪いまま成長し色んな疾病発症のリスクが高いとも言われています。

腸内細菌叢はいつできあがる?

出生直後の新生児の腸内には、ほとんど細菌は認められません。

腸内細菌の生着は生まれた直後から始まります。母親や家族、医療関係者などから、環境を介して口から細菌が侵入します。

生後3から4日になると乳児型の腸内細菌叢となって安定します

自然分娩では母親の腸内細菌群の多数が子供に受け継がれます。

母親由来の腸内細菌叢がまだ免疫が発達していない新生児を病原菌から守ってくれています。

母親の豊かな腸内細菌叢と経膣分娩が、生まれてくる子供の健康に重要

17組の母親と子供の便からビフィズス菌を時間帯を分けて分離し、詳細に調べた研究を紹介します。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3828338/

それによると自然分娩で産まれた新生児11人から母親と同一菌株のビフィズス菌が分離されていました。自然分娩では母親から新生児へ複数のビフィズス菌が受け継がれていることがわかりました。

帝王切開で出生した新生児ではビフィズス菌は検出されるものの母親と同一菌株のビフィズス菌は検出されませんでした。

腸管内におけるビフィズス菌の定着も自然分娩と比べて遅いことが確認されています。

母親から膣内の微生物叢への暴露不足を解消する試みを紹介します。

帝王切開で分娩予定の妊婦の膣内に無菌ガーゼを挿入しておき、出産と同時にガーゼを新生児の顔面にかぶせます。70%程度は、母親のビフィズス菌などが移行できるようです。

https://www.researchgate.net/publication/292676440_Partial_restoration_of_the_microbiota_of_cesarean-born_infants_via_vaginal_microbial_transfer

抗菌薬は母親への投与も、出生後も幼少時であればあるほど生まれてくる子供の腸内細菌叢に影響を与えます。

妊婦さんは生まれてくるお子さんのために、自分の腸内細菌を整えましょう。

生後3年で個人の腸内細菌叢が安定化する

離乳後の乳幼児はより多くの種類の食物を摂取するようになり腸内細菌叢が多様になっていきます。

いずれにしても、生後3年を経過すると個人の腸内細菌叢の組成は安定化していくようです。

この3年間で最も重要なことは不必要な抗菌薬を飲まないことと、精神的ストレスを与えないことです。

2歳までの抗菌薬投与は小児の肥満のリスク因子となるということが報告されています。

2006年10月から2013年9月に生まれた子供たちのアメリカからの報告です 。

https://gut.bmj.com/content/68/1/62

33万人の小児のうち24万1502人の72.4%が抗菌薬を処方されていました。

抗菌薬投与されていた子供たちはその種類に関係なく、1.23から1.28倍肥満を引き起こす可能性が高かったそうです。

薬剤耐性菌細菌の問題だけではなく、特に幼少時の抗菌薬投与がその個人の一生に影響するだけの腸内細菌叢の変化を引き起こす可能性があります。

腸内細菌叢が子供の行動にも影響を与えているという報告があります。

5から7歳の40人の子供たちの便の腸内細菌叢と食事調査、子供の行動調査票、親子関係調査票を集めて比較検討しています。

https://doi.org/10.1128/mBio.02780-19

子供の行動と腸内細菌叢の組成が強く関係することがわかり、行動異常やうつ状態に関係する悪玉腸内細菌も見つかりました。

腸内細菌叢の変化は食事の種類等よりむしろ、家族との絆に影響をうけていました。

幼少時のストレスが少ない安心の得られる親子環境が、腸内細菌叢を整えるということが言えます。

腸内細菌を整えると風邪にかかりにくくなる

健康な乳児から発見されたビフィズス菌BB536は、日本でビフィズス菌サプリメントやヨーグルト内に多く使用されています。

この菌を摂取した結果、下痢の回数が減ったことよりむしろ風邪に罹りにくくなったそうです。

マレーシアの就学前児童520人に投与し下痢または上気道疾患に及ぼす影響を評価した研究です。

https://www.wageningenacademic.com/doi/epdf/10.3920/BM2017.0063

219人が毎日1 G のビフィズス菌を摂取しました。

十ヶ月間の試験期間中下痢に対して有意な効果はありませんでしたが上気道疾患の罹患率に有意な差が認められました。

喉の痛みの持続時間は有意に46%減少し、発熱期間は17%減少、鼻水は15%減少していました。

腸内細菌叢の中で、抗炎症効果や免疫調整特性に関連する Faecalibacterium属 の菌がたくさん増えていたそうです。

腸内細菌を整えるために食物繊維と乳酸菌など発酵食品が大事 

腸内細菌を整えるために不必要な抗菌剤を飲まないことは説明していますが、積極的に整えるにはどうすればよいのでしょうか。

乳酸菌などの入ったヨーグルトや納豆などの発酵食品を摂取することは容易に想像がつくと思います。 毎日続けて摂取して常に補充していきましょう。

これだけでは不十分です。腸内にもともと存在する善玉菌を増やすための栄養分が必要です。

これがオリゴ糖や食物繊維です。 乳酸菌などの善玉菌の増やす栄養分です 。

寒天から作り出した機能性オリゴ糖であるアガロオリゴ糖は、マウスの実験で腸管の炎症を抑制することが明らかになっています。

食物繊維では、グアーガム酵素分解物(PHGG)といわれるサンファイバーなどがサプリメントとして有用です。もちろん食べ物から取るということが一番自然なことです。

ストレスも腸内細菌叢を乱し、様々な病気を引き起こす可能性がある

腸内細菌叢を整えるために、ストレスをかけないということも大事になります。

緊張するとお腹がゴロゴロしたりするというのは腸脳相関かもしれません。腸と脳がお互いに影響を及ぼしているという比較的新しい概念で最近研究が進んでいます。

統合失調症の患者さんに胃腸障害の人が多いことも言われています。

腸内細菌がある程度整っていると同じストレスを感じた時もストレスホルモンが出づらいとわかっているのです。

お腹の調子が悪い時はストレス耐性が低くなっていて大きくストレスを感じます。 

腸内細菌を整えることで、うつ病を予防したり改善させるといった、うつ病を対象とした臨床研究もあります。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0899900715003913?via%3Dihub

通常の抗うつ薬治療だけした群20人と、抗うつ薬+ビフィズス菌などの善玉菌内服を併用した群20人で、8週間後の治療効果を比較しました。

ビフィズス菌を上乗せした群のほうが、うつ症状スコアよりが減少していたつまり、うつ病の回復が良かったことがわかりました。 

腸内細菌叢は国ごとに異なることがわかっているため、海外の研究は参考程度に日本人の比較研究がより重要です。

そこで日本人での研究も紹介します。

https://doi.org/10.3164/jcbn.18-105

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcbn/64/3/64_18-105/_pdf/-char/en

自閉症スペクトラム群の子供13人にサンファイバーを一日6g平均2か月摂取させています。

その結果この水溶性食物繊維の摂取により、子供たちの重症の便秘が改善しました。

さらに易刺激性スコアが改善し生活の質の向上が確認されています。

様々な病気を引き起こす腸内細菌叢の乱れを整えよう

不必要な抗菌剤とストレスを避けよう

発酵食品と食物繊維を積極的にとろう

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