補聴器は耳かけ型の一番安いもので良いので、早めに装用開始して一日中つけていることをオススメします。

この記事を書いた人
富田耳鼻科@新発田市

富田雅彦:耳鼻科クリニックの医師です。
富田耳鼻科クリニック@新潟県新発田市舟入町3丁目11-18-7

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加齢性難聴では補聴器を使って生活の質を上げるしかありません。初めての補聴器どこで買えばよいか、使用で注意すべき点、オススメ補聴器を説明します。

音は脳で聞いている、耳は音の高低や変化を脳に伝えるだけの役目

音が聞こえにくい時に手のひらをパラボラアンテナのようにして、耳に添わせる動作をしますよね。耳の形は正にパラボラアンテナの様に音を集める効果があります。そして音は鼓膜を震わせて、振動を鼓膜につく耳小骨が奥に伝えていきます。その奥には液体に満ちた蝸牛という水槽があります。音の振動は水槽の水を揺らします。水槽の水の揺れは、水槽の底にある有毛細胞といわれる海草のような構造の葉っぱを揺らします。海草(有毛細胞)は葉っぱ(毛)の揺れを根っこの部分で電気信号に変えて脳へと伝えます。

加齢により音の電気信号を感じる有毛細胞の毛がなくなっていく

音の高さによって反応する海草(有毛細胞)が決まっています。特に高い音担当の海草(有毛細胞)は、加齢により音を聞きすぎて、葉っぱがいたんで削れてしまいます。つまり年を取ると、この葉っぱ(有毛細胞の毛の部分)が少なくなり高音障害の加齢性難聴になっていきます。

同じ大きさの音を聞いても、音の信号が電気信号に全部変わらずに、部分的に伝わるのが難聴の状態です。この情報はそのまま脳に伝わります。脳の中でも高い音担当から低い音担当までの部分が決まっています。脳の高い音担当の部分は、加齢性難聴では、耳からの高い音の電気信号が届かないので音を感じていません。耳の奥で音情報(高低やスピード)が減少して脳に伝わっているのです。

難聴に慣れ親しんだ脳の回路に、補聴器を使うと最初は不快でしょうがない

脳の高い音担当部位は、普段反応していないのですが、満足に音が耳から伝わってこないとは考えません。逆に音が入ってこないので、少しでも音の電気信号を感じようと、感度(敏感さ)があがり細胞の電気活動を増加させます。これが耳鳴りともいわれています。聞こえてこない音の電気信号を頑張って拾おうと、脳が余計なお世話をした結果、我々は耳鳴りを感じるわけです。

このように難聴が起こっている高い音担当の脳の部分(聴覚野)が変化した脳が、難聴に慣れ親しんだ脳というわけです。補聴器をすると、こんな頑張っている脳に、いきなり補聴器で若い頃に聞いていたレベルの電気信号が入ってくるのです。そうすると脳はビックリして不快感をあらわにします。難聴部分担当の脳の聴覚野には、いままで届いていなかった電気信号がたくさん一気に入るためです。この部分は少しでも電気信号を拾おうと敏感になっていたわけですから、若い頃より余計に電気信号を拾ってしまうと思います。ザーザーいろんな音がうるさくて敵わないと補聴器つけ始めの方はおっしゃるわけです。

補聴器は全然聞こえない、使えないと感じ、タンス貯金ならぬタンス補聴器に

補聴器のつけ始めたときに、非常に不快で辛いと皆さんがおっしゃいます。そうすると補聴器を調整するお店の人は、補聴器からの音の出力を下げてしまいます。補聴器をつけている人が辛いのを我慢することなく、補聴器の出力を下げると、余計言葉の聞き取りが悪くなります。結果的に、不快ではないが聞き取れないという補聴器の出来上がりとなります。補聴器から十分に音が入っていないため普通の音声が脳まで届いていない、つまり使ってもらえる補聴器にならないわけです。購入したけど使われず、補聴器がすぐに引き出しにしまわれてお蔵入り(タンス補聴器化)するわけです。

音のシャワーを浴びせると、難聴のなかったころの脳に戻っていく。

最も大事なことは、補聴器に慣れるまでの3ヶ月間、不快に感じる雑音や環境音に、脳を慣れさせることなのです。これによって、十分な出力のある、言葉の聞き取れる補聴器を目指して調整するのです。最初から一日中、出来たら両耳につけて、なるべく細かく(週一回程度)調整をし、少しずつ音を上げる。難聴脳を周りの雑音に慣れさせていくことで、脳を変化させるのです。

うるさく不快に感じる音も常に聞いていると脳が変化して徐々に不快感が減少していきます。このためには補聴器をつけない時間を短く、補聴器を常に付けていることにより、脳を変化させます。補聴器をつけたり外したり、たまにつけるというだけでは脳は変わっていきません。補聴器を常につけていることで脳のリハビリテーションになって結果的に補聴器がうまく使えるようになります。

常時装用で、周りの雑音が気にならなくなり言葉が際立って聞こえるようになる

補聴器を手放せなくなります。この補聴器は決して高いものである必要はありません。片耳の10万円程度の基本的なものです。できれば両耳に使うことがベターです。小さな高性能の1つ20万以上の補聴器を買うぐらいなら、両耳用に2個購入しましょう。さらに適切な調節をしてくれる、テクノエイドという公益財団法人が認定している補聴器技能者から購入しましょう。巷のメガネ専門店のナンチャッテ調整ではいけません。対面販売でないインターネットでの購入者の7割は不満足さを感じているということです。

日本補聴器工業会の補聴器についての2018年の調査では、難聴者が購入した補聴器の平均価格は1台15万円だそうです。しかし、その詳細を見ると実に23%が20万円以上の補聴器を購入しています。40万円台が2%、50万円以上が1%存在しています。高価な上位機種の方がよく聞き取れるという患者さんの思い込みがあると思われます。更に補聴器販売店側は、皆さんが希望されるのであれば、より高価なものを売りたいという気持ちもあるでしょう。

実際の補聴器リハビリテーションの報告では、225例中91.5%でベーシックな耳掛け型で十分に満足な補聴器装用効果が得られています。

補聴器もメガネの様に、困っているみんなが当たり前にしている世界になれば

補聴器工業会の先ほどの調査↓によれば、http://www.hochouki.com/files/JAPAN_Trak_2018_report.pdf

難聴があるにも関わらず補聴器を使わない理由は多い順に5つ挙げられています。1:煩わしい、2:補聴器を使用しても元の聞こえに戻らない、3:効果が実感できない、4:ほとんどの場所でよく聞くことができるのでさほど困らない、5:補聴器を購入する経済的な余裕がないと報告されています。

未だに補聴器をしていると年寄りに見られると言う考えを持つ人も多いようです。補聴器を使用していることをからかわれたり、仲間はずれにされたということが、補聴器使用者の25%で経験があると答えています。やはりまだ補聴器はメガネのようには市民権を得ていないと考えられます。メガネをしていてからかわれたりする人はいませんよね。わたし耳鼻科咽喉科医としても、市民権が得られるように啓蒙していく必要があると考えています。

まとめ
補聴器は朝から晩まで(お風呂以外)使用しましょう。常時音が入るようになり、脳は若返ります。
可能なら両耳装用で、10万円前後のものを使いましょう。20万と高価なものや集音器と言われる3万程度の安いものも良くありません。
耳鼻科を受診して診察してもらい、紹介された認定補聴器技能者から購入しましょう。認定補聴器専門店や認定補聴器技能者が常駐している眼鏡屋さんでも良いです。
補聴器の調整は無料のところで、何回でも可能なところで、納得いくまで何回も調整しましょう。遠慮はいりません。調整も込みでの高価な買い物ですから。
人との会話が不自由だなと感じ始めたら補聴器を考えましょう。早いに越したことがありませんよ。

補聴器は認知症予防になります。以下の記事もご参考ください。

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