口から水がもれる。片側の顔が動きづらい。顔面神経麻痺と言われたら、最速で抗ウイルス薬が必要です。

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富田耳鼻科@新発田市

耳鼻科クリニックの医師です。
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歯磨き後にうがいをしたら水が口の片側からもれる。片目がつぶりづらい。手足の麻痺がないのに片側の顔のみ麻痺していたら、顔面神経麻痺です。頭の中が異常ないのであれば、3日以内に抗ウイルス薬を飲みましょう。末梢性顔面神経麻痺について解説します。

脳や脳幹の病気からくる顔面神経麻痺は、舌や体の麻痺も起こしている

脳や脳幹の病気、脳梗塞で顔面神経麻痺を引き起こすことがありますが、この場合他の神経の麻痺つまり舌や上半身や下半身の片側の麻痺も同時に引き起こしています。そのため容易に脳の病気でないかが判断つきます。顔面だけだった場合は額にしわがよるかどうかを確認しましょう。頭を上げずに天井をみてもらいましょう、これで上目遣いの状態です。この上目遣いにしたとき、額のしわが左右とも同じくらい上手にできていれば中枢性(脳か脳幹が原因)です。脳神経内科のある病院へ駆け込みましょう。片側の額だけが麻痺で動きづらければ、末梢性つまり脳から出た後の通り道で顔面神経が痛んで麻痺を引き起こしています。

顔面神経は、脳の底から、耳の後ろの硬い骨を通って、耳の下で枝分かれして顔の表面に分布

顔面神経が耳の後ろから鼓膜の裏側、耳の下を走行しているため、この範囲で神経が麻痺する末梢性顔面神経麻痺は、耳鼻咽喉科で診察することが多いです。麻痺の原因はヘルペス(疱疹)ウイルスといわれています。耳の奥の骨(側頭骨)の中を走っている顔面神経で何らかの原因でウイルスが増殖して神経をむくませます。その結果、骨の中のトンネルの中を走っている顔面神経が太くなり、トンネルの壁に押しつけられて神経が麻痺をすると考えられています。顔面神経麻痺になった直後に、側頭骨を手術で削りトンネルの壁を解放すると神経が膨らむこと、この時顔面神経の周りの液や筋肉からヘルペス(疱疹)ウイルスがたくさん検出されたことから、これが原因と明らかになりました。

末梢性顔面神経麻痺には、抗ウイルス薬とステロイドで浮腫を取る治療

現在では末梢性顔面神経麻痺が起こった場合には、ヘルペスウイルスに対する抗ウイルス薬を患者さんに内服してもらうことが標準的治療となっています。 さらに神経のむくみを取るためにステロイド薬を飲んでもらうことも標準的治療です。

2011年に顔面神経研究会は、顔面神経麻痺診療の手引き(治療ガイドライン)を発表しています。これは、顔面神経麻痺の研究の第一人者である前名古屋市立大学教授、村上信五先生の研究がベースになっています。ちなみに関ジャニ∞の村上信五さんとは違います。現在耳鼻咽喉科学会の理事長を務めています。 https://twitter.com/tomtom_e_n_t/status/1353129614311219200?s=20

ここでポイントになるのは、原因が帯状疱疹ウイルスに対しては抗ウイルス剤を高用量を1週間飲んでもらう事です。単純疱疹ウイルスに対しては通常量投与します。 末梢性顔面神経麻痺のうち疱疹がでてこない麻痺(ベル麻痺と呼ばれます)では、どちらのウイルスが感染しているかを事前に知ることはできません。ベル麻痺の中で8から29%は帯状疱疹ウイルス感染と考えられています。 そこでガイドラインでは顔面神経麻痺が強い場合は、帯状疱疹ウイルス感染が強く疑われるため、抗ウイルス薬を高用量投与しています。数日後に判断し改善が認められなければ、高用量を持続します。改善が認められれば、抗ウイルス薬を中止し、ステロイド投与量を減らし副作用を減らすために、治療強度を弱める(薬の量を早めに減らす)という対応をしています。

発症から3日以内、遅くとも5日以内に薬を開始しよう!

実は最も大切なポイントは発症してから内服を開始するまでの期間です。帯状疱疹ウイルスや単純疱疹ウイルスに対する抗ウイルス薬は、 ウイルスの合成を阻害することで効果を発揮します。そのため、すでに増殖したウイルスには無効です。再活性化してから三日以内の早期投与が必要です。 とにかく早く耳鼻科を受診し、抗ウイルス薬を処方してもらう事が最重要になります。

もう一点、ステロイド投与についてです。顔面神経のむくみが原因と言いましたが、むくむことによって骨のトンネルの中で神経がダメージを受けます。むくむ前に、むくみ防止のステロイドを内服する必要があります。はっきりと何日以内とはわかっていませんが、遅くても5日以内に投与されるべきと言われています。 やはり顔面神経麻痺の治療で最も大事なことは早期治療になります。

顔面の動きが鈍いと感じたらすぐに耳鼻咽喉科を受診する必要があります。 一般的には脳神経内科や脳神経外科に最初に受診する場合が多いと思います。しかしそこで抗ウイルス薬が出されない場合は、すぐに医者を変えて顔面神経麻痺の標準的治療をしてくれる病院を受診することを強く勧めます。私の所属していた新潟大学耳鼻咽喉科公式チャンネルにも解説動画がありますので参考↓に。

顔面神経麻痺の診断と治療

治療は分かったけど麻痺している顔にマッサージは必要?

顔面神経麻痺が起こった時に、患者さんからは、顔のマッサージはどうすればいいのでしょうか?とよく聞かれます。麻痺は神経の問題なので、顔面の筋肉のマッサージは治療効果には関係ないと考えられています。神経が伸びてきた時に、顔面の筋肉がこわばらないため、つまり顔面の拘縮を予防するため、筋肉をほぐすということはしても良いといわれています。自分から顔の筋肉に力を入れずに動かすわけでなく、顔の筋肉をほぐしましょう。

してはいけないことは、無理やり顔を動かすということです。自分から無理に顔を動かすと、病的共同運動と言われる、顔面神経の枝の混線を引き起こします。病的共同運動とは、目だけをつぶろうと思ったら口が引っ張られて意図せず動いてしまうというものです。顔面神経の枝同士の混線防止に、無理やり顔は動かさないようにしましょう。 

参考文献1:神経麻痺に対する抗ウイルス薬のエビデンスhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/117/10/117_1292/_pdf/-char/ja

参考文献2:ウィルス性顔面神経麻痺-病態と後遺症克服のための新たな治療http://www.gakkai.co.jp/jibika116/jibika116_tokubetsu_shoroku.pdf

参考文献3:末梢性顔面神経麻痺患者に対するマッサージの文献レビューhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsop/43/2/43_105/_pdf/-char/ja

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