めまいの市販薬を専門医が初めて詳しく解説。眩暈の症状でなく、めまい発作からの時間で市販薬を選ぼう。最低限の病院受診すべきかのアドバイスもしています。この動画を見ればめまいに悶々と悩むことなく薬局で市販薬を買ってハッピーになれます。
めまいと言えば思いつく市販薬がない理由
皆さんは、蓄膿症にはチクナイン、食あたりには正露丸、これらの市販薬は思いつきますよね。でも、めまいがしたときに飲む薬といえば何でしょう?思いつきませんよね。
なぜでしょうか?なぜなら、めまいの原因が一つでなく、色々あるので、これ一つ飲めば治るとか安心という薬、つまり眩暈にはこれというわかりやすい薬はないのです。
それでも病院に受診する暇が無いから市販薬でどうにかしたい、すぐにめまいを止める方法をしりたいと思われる方はいらっしゃると思います。そこで今日は、めまいで病院に受診したときに、処方される薬と似ているもの、代わりになる市販薬をお話します。
めまいが起こってからの時間で対応方法と薬を選択
今回は眩暈が起こってからの時間毎に眩暈への対応方法とオススメのお薬を紹介します。
めまいが起こった直後から1日、数日から2週間、1か月以上経っている、これら大体3つの時期です。
実は、めまいを解説した多くのウェブサイトや動画では、めまいのタイプによって診断をしたり治療薬を分けています。
目の前がぐるぐる回る回転性めまいは耳が原因、くらっとする、頭から血が引くような感じは、血圧だから内科といった具合です。
しかしめまいの症状やそれを皆さんがどのように感じるかはそんなに分かりやすく分類できないはずです。めまいの症状を自分で判断して効果的な市販薬を飲むには、もっと話を単純にする必要があります。そのため、めまい症状のタイプ別ではなく、めまい発作からの時間軸に沿った分類をオススメします。
めまいが起こってから、どれぐらいの時間が経っているかで薬を分けるのです。
めまいが起こった直後から1日くらいの救急・急性期、めまいが起きて数日から1ヶ月までの亜急性期、そして1ヶ月から半年の慢性期の三つに分けて解説していきます。
救急・急性期:めまいが起こった直後から動けるようになるまで
めまいが起こった直後には、まず危険なめまいを除外してください。動画で解説していますのでこちらも参考にしてください。
危険なめまいでないとわかって救急外来を受診しても特効薬はありません。
残念ながらめまいをピタリととめる、吐き気を一瞬で消す薬は、注射の薬であってもないのです。
めまい直後は吐き気が強く、胃の中のものを戻してしまうことも多いため、体の水分のバランスが崩れます。そこで救急外来では、水分や吐き気止めが点滴されます。
トラベルミンと五苓散
この時、薬局で手に入る市販薬なら、トラベルミンをオススメします。乗り物酔いの市販薬です。実際に病院でも、めまいがした時の頓服として処方されているお薬です。
めまいが起こった時に、危険という神経信号が、脳の中の吐き気センサーに、伝わらないように、ブロックする作用があります。眩暈に伴う吐き気を抑えてくれます。
アレルギーに使われる、抗ヒスタミン薬です。私オススメの花粉症市販薬のフェキソフェナジンと違い第1世代と言われる古いタイプです。なので薬の分子量がとても小さいので、頭の中心部まで薬が到達して効果を発揮します。ただし副作用として眠気が強く出ます。
このため、めまい発作に苦しんでいる患者さんを強制的に休ませるのにも適しています。
でも、緑内障と前立腺肥大症のある人には禁忌なので注意しましょう、眼圧を上げたり、オシッコが出づらくなる場合があるからです。
これを飲むと眠気が出るので、めまいがしていても仕事をしたい、ウトウトはできないという人には別な薬をオススメします。めまいの急性期にトラベルミンを飲めない場合です。緑内障や前立腺肥大があるという方も当てはまります。
それは五苓散という漢方薬です。内耳や体全体のむくみをとってめまいを減らします。先ほども言いましたがめまいで水分バランスが悪くなっています。このバランスを整える効果もあります。
最近では天気や気圧変化の頭痛にも効くと言われて有名になっている薬です。チクナインでおなじみの小林製薬でしたらテイラックという名前で売っています。低気圧の不調が楽になるということでしょうか。いつものようにネーミングセンスが最高です。ロート製薬のキアガードという気圧変化をガードするという薬も中身はおなじです。
五苓散は即効性があります。漢方薬は長く飲まないと効かないと勘違いしている人がいますが間違いです。1日3回までであれば4時間空けて何度でも飲んでよいです。
亜急性期:めまいして数日から2~4週間
めまいがひとしきり落ち着いて、少し動けるようになる時期が亜急性期です。めまい直後から1週間ぐらいはふらふらする感じが続きます。その後はたまにふらっとする感じが少し残るのが1週間です。めまいがほとんどなくなるのはめまいが起こって2週間と思っていてください。
この時期にあのめまいの原因は何だったのだろうとがすると、医療機関を受診される方が多いです。受診の時間がなければ、めまいの原因の3から4割を占める良性発作性頭位めまい症を自分で診断してみましょう。
別記事で解説していますので、参考にしてください。
めまい後に片耳変なら、市販薬に頼らず、すぐに病院受診
この時、絶対に病院を受診して欲しいのは、突発性難聴に伴うめまいです。めまいが落ち着いた後に、右と左の聴力に違いがないか、イヤホンなどで確認してください。右と左で聞こえ方に差がある場合は、急いで耳鼻科を受診してください。
なぜかというと、めまいは自然に治っていきますが、突発性難聴は、治療をしないで放っておくと1か月程度で聴力が固定して治らなくなるからです。突発性難聴は特に1週間以内、治療開始が早ければ早いほど治る確率が高くなります。めまいの後に特に片耳がおかしいと思ったら市販薬に頼らず、すぐに病院を受診しましょう。
耳症状がないということであれば、この時期に飲むオススメの市販薬はトラベルミンRです。トラベルミンシリーズには数種類あるので、名前を間違えないようにしてください。トラベルミンRとRがついています。
トラベルミンR
この薬は、病院でもこの時期に処方されるジフェニドールという成分を含んでいます。吐き気を抑える効果と、首から後頭部、更に脳内の血流を良くする効果もあると言われています。さらに胃がムカムカするのを抑える、スコポラミンという成分も含んでいます。
ただ、2週間以上長期に飲む必要はありません。
病院で処方されるジフェニドール、製品名セファドールも一か月以上使用した場合に効果があるという、長期有効性の報告はないからです。
この時期に急性期で紹介した五苓散を続けて飲んでいても良いです。薬を飲む飲まないとは別に、めまい回復の期間である、この時期は積極的に水分を多く取るようにしてください。
次に亜急性期でめまいが治らず、1か月たってもめまいを感じる人がいます。
慢性期:めまいが1か月以上続く
慢性期のめまいです。主に三つのタイプに分かれます。
一つはバランスセンサーが完全に治っていなくて、余力がない状態。2番目はまためまいがしたらどうしようと不安が強い場合。3つめはそもそも救急外来にいった方がよいか悩むぐらい寝込むような大きいメマイ発作がなく、初めからなんとなくめまいがするとか調子がわるいという場合です。
順番に解説していきます。
慢性めまい原因①代償不全:バランスのセンサーが完全に治ってない
一つめの急性期めまいの後にめまいのバランスのセンサーが完全に治ってない場合です。余力がないというのは、普段の生活は良いのですが、疲れた時やストレスがかかった時にクラクラとめまいがします。
このような場合はめまい体操などのリハビリが必要です。そして合間の調子の悪い時に五苓散を飲むことをオススメします。
慢性めまい原因②心因性:バランスセンサーは完治も不安でめまい
2つめは、実際にバランスのセンサーは治っているのに、またなったらどうしようというようなめまいの恐怖感や不安など、心因的な要素が絡んでいる場合です。
このような時は、抗うつ剤や安定剤が必要になることもあるので、病院を受診し診断してもらいましょう。
慢性めまい原因③救急性に発症せず、初めから同じ程度で特に山や谷がなく不調が続く
3つめは、特に寝込むような急性のめまいがなく、なんとなく同じようなめまいが1ヶ月以上続いている場合です。
年を取ったことによる筋力低下やバランスセンサーの衰えで、歩いてる時や急に動いた時に転びそうになる感じがある。
肩こりや首こりによる脳への血流不足などで、横を向いた時や後ろを向いた時にくらっとしたり、フワッとする感じがある。
疲れがたまっているのか頭が重い感じがする。このようにすごく悪くも良くもならないめまいが続いている場合です。
このような場合は、病院に行ってもはっきりとした原因が分からない事もあります。
そんなとき病院で処方されるのは漢方薬です。市販薬として売っているものの中からオススメを3つ紹介します。
漢方薬3つで体調を整える
苓桂朮甘湯がめまいの薬のファーストチョイスです。水毒という体内に水が偏在するとめまいを引き起こすと2000年前から考えられています。この水毒を治す作用があります。
さらに低血圧やだるい感じがする、なんか元気がわかないという場合は補中益気湯を加えてみましょう。体力が低下している時の需要強壮など栄養ドリンクの代わりに飲むと良いと思います。
年齢の高い方で、どうも動いた時にふらっとする、頭が重い感じがするときは、釣藤散を加えても良いです。この薬も脳の血流を良くする効果があると言われています。元々は血圧高目の頭痛を抑える薬ですので、後頭部が痛いめまい持ちの方は飲んでみましょう。
以上めまいに対する市販薬についてお話しました。まとめます。
まとめ
めまい直後の救急急性期には、危険なめまいを除外してください。トラベルミンで吐き気を抑えてゆっくり休みましょう。
めまいが落ち着いた亜急性期には、耳の症状がないかをすぐに確認してください。トラベルミンRや五苓散でめまいがなくなるのを待ちましょう。
めまいが長く続いた慢性期に、不安が強い場合は、病院を受診してください。心因性に効く市販薬はありません。
ちょっと動いた時にフラフラする、横を向いたときにクラッとする、頭が重いなどの症状は市販の漢方薬を試してみてください。
めまいの常備薬:トラベルミン、五苓散
一度めまいを体験すると二度としたくない、辛い思いをしたという方は多くいらっしゃいます。めまいが起こった時に備えて常備薬として、トラベルミンや五苓散を買っておいてもよいですね。
参考文献
めまいフローチャート
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/116/12/116_1282/_pdf/-char/ja
慢性めまい概説
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkotokeibu/124/9/124_1313/_pdf/-char/ja
めまいのリハビリと漢方
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/120/12/120_1401/_pdf/-char/ja
コメント
コメント一覧 (6件)
初めてコメントいたします、ユーチューブ楽しみに拝見しています、ツムラ漢方苓桂朮甘湯エキス顆粒に首コリ対策としてユービーケアを加えても問題ないでしょうか?
服用量は双方とも、倍飲みで差し支えないでしょうか?
両剤を一緒に飲むことは差し支えありません。倍量内服は推奨しません決められた用量でお飲みください。
お腹の痛みも様々な要因があるので、「食あたりには正露丸」という文言は少し不適当ではないかと思うのですが。本筋とは関係ないですが、気になりましたので。
自律神経、中枢神経に作用するということなのですね。
「トラベルミン」「トラベルミンR」
乗り物酔いの薬が効くというのは、めまいも、乗り物酔いも耳の中の耳石が動かされておきる!と解釈してよいのですか?
酔い止めもめまいの薬も、主に気持ち悪さを取る成分がメインになります。耳石への関与は限定的です。