アレルギー性鼻炎は完全に治すことができます。ただしスギとダニアレルギーの場合に限ります。舌下免疫(アレルゲン免疫)治療です。特徴と注意点を解説します。
ダニアレルギーとスギ花粉症に対する根治治療が、舌下免疫治療
現在舌下(アレルゲン免疫治療といわれるアレルギーを根本的に治す治療が行われています。
微量のダニやスギのアレルゲンを少しずつ舌の下に摂取して、体を抗原に慣れさせます。そしてダニやスギに対するアレルギー反応が起きにくくする治療です。
ただしこの治療は長期間かかります。体を抗原に少しずつ慣らすため、時間がかかるのです。
当院では最低2年、可能なら4年間の治療を目標に進めています。4年間経った後は、薬を飲まなくても、アレルギー症状が長期間なくなると言われているからです。
良さそうだからやってみようかしら、でも何か大変そう。。。
一日一回舌の裏に薬を5分間置いておくだけ。5から6歳くらいから大人までできます。
一日一回舌の下側の口腔底という部分に、5分間錠剤を留めておき溶けるのを待って、飲み込むます。
お子さんにも治療が可能ですが、現実的には、毎日薬を決まった時間に、舌の下に留めておくことが必要です。こういうわけで当院では、6歳から7歳以上に勧めています。
スギの花粉症とダニのアレルギーが対象になります。その他のイネ科などの花粉症をもっていてもスギ花粉症もあれば行えます。
ただしイネ科の花粉症とスギ科の花粉症があった場合は、スギの舌下免疫治療をしてもスギに対するアレルギー反応しか抑えません。
ダニや花粉症、イヌなど、たくさんのアレルギーを持っている方でも治療ができます。さらにスギとダニの舌下免疫治療を同時に行うこともできます。
ぜひしてみたいけど。すぐに効果があるのかな?
治療効果は8割以上、早ければ開始4か月前後で効果が現れる。
治療効果は、長期データはまだ出ていませんが6から8割と言われています。残念ながら100%ではありません。
正しく治療が行われると3から5ヶ月で治療の効果が期待されます。そのためスギ花粉症の始まる2月より前の 10月くらいに開始すると有効です。
ダニについては10月が一番症状のピークになりますので春から夏に開始するのが良いでしょう。一年中治療することにより年を追うごとに症状の改善が期待できます。
臨床試験では5から17歳のダニ通年性アレルギー性鼻炎458例に1年間投与した結果、症状改善が得られています。
これは5から11歳、12から17歳に層を分けても結果は同じで、若年でも効果があることが分かっています。
アレルギー症状のピーク時には、開始できません。スギ花粉症の季節やダニの症状ピーク時には、舌下免疫治療開始時のアレルギー反応が強く出過ぎる可能性があるからです。
子供が辛そうにしているから、させてみたいけど。できるかしら。なんだか怖いな。
毎日安全に服用を1回行えるかどうか、数年にわたり長期間通院を続けられるかどうかが最も大事な点
この治療で大事なことは2つあります。①薬の舌下の服用を、安全に行うことです。いつ服用するかに注意が必要なのです。
薬の投与の前および後2時間激しい運動、入浴を避けなければなりません。最も気にしなければいけない副反応は、運動誘発喘息(アナフィラキシー)だからです。
毎日何時に服用するかをよく考える必要がある
運動は体の免疫反応を過敏にします。このため、運動により喘息症状やショック症状が出る可能性が高く、アナフィラキシーを誘発しやすいのです。
このため服用前後2時間は激しい運動や入浴、アルコールの摂取を避けるようにします。
入浴前後を避けるなら朝にすればよいと考える場合もあると思います。
中学生や高校生では、部活の朝練や、遅刻をするからと言って自転車を急いでこぐということもありえますので、注意が必要です。朝学校に行く前に服用した場合、1限目の体育の授業ももちろん避ける必要があります。
このため中高生では朝よりは夕方夜に行う必要があります。その場合には入浴時間に注意が必要です。
寝る前に行う人もいます。しかし忘れて疲れて寝てしまうということも中高生は多々あり得ます。夕食前後に投与するのが有効かもしれません。
うちの子は部活しているから、夕食後にしよう。試合の日は寝る前でもよいかも。できそうだ。
月一回の通院が、数年間可能かどうかを考える
もう一つの注意点は、②月一回定期的に病院を受診できるかどうかです。それを数年間続けられるかどうかです。
薬は1ヶ月分しか、現在処方できません。特に中高生では部活や学校の授業が忙しくなります。
通院についてくる 保護者の関係で定期的に受診できなくなることも多くあります。特に変わりなければ本人だけの受診も安定期になれば可能です。
大人であれば、通院代も数年間でかさみます。3割負担で、クリニックの受診と薬局での薬代を含め、毎月3000~4000円になります。
ただそれを乗り越え3から4年の治療でその後何年も通院が不要になります。
舌下免疫治療の開始時期で良いのは、小学校在学中かもしれません
アレルギーマーチと言われる気管支喘息など別のアレルギー反応を抑える効果も言われていることから、重症のダニアレルギーによるアレルギー性鼻炎の方にはとても有効な治療と思います。
小学校に初めて、部活で忙しくなる中学生前半までに終了することが一番良いタイミングかもしれません。
忙しいタイミングの高校生の時代には、病院受診もいらなくなるほど完治が期待できるからです。 もちろん子供医療費助成の対象ですので家計への負担も減るでしょう。
なぜ舌の下から薬が効くのでしょうか
鼻や気管などは、アレルギー細胞がたくさんあり、アレルギー反応を引き起こしやすかったのです。
舌の下にはアレルギー細胞が少ないためアレルギー症状が起こらずに抗原に慣れていくと考えられています。
まず、舌の下の口腔内粘膜より、薬の成分が吸収されます。
その情報が顎の下のリンパ節に行き、そこに存在する細胞が反応すると言われています 。
この細胞は樹状細胞と呼ばれています。投与したダニアレルゲンを取り込み、この情報を他の免疫細胞に伝えます。
免疫療法は、司令塔からのメッセージを変えアレルギーが起こらないように体質を変えるのです。
参考文献:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiaio/1/1/1_21/_pdf/-char/ja
結論:アレルギー性鼻炎は治すことができます。
ダニアレルギーのアレルギー性鼻炎でお悩みのお子さんをお持ちの方は、是非治療を考えてみてください。
もちろん大人でも行えます。
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