イギリスの政府がオミクロン株の大規模データを12月31日に発表しています。オミクロン株でわかっていることをイギリスと南アフリカのデータ(2021年12月30日発表)からまとめました。日本のデータも(2022年1月5日発表)追記しています。
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オミクロン株の入院率、重症化率、死亡率は低い
2021年11月24日に南アフリカでオミクロン株が確認されています。
オミクロン株の特徴を調べるため、南アフリカでのオミクロン株主体の第4波(2021年11月15日から12月7日)の入院患者をデルタ株の2021年6月の第3波と比較しています。
doi.org/10.1001/jama.2021.24868
オミクロン株主体の第4波の入院患者数は2351でデルタ株主体の時には最大6342人でした。救急外来から入院した割合は、デルタ株の時は69%でオミクロン株では41.3%でした。
第4波では酸素吸入を要する患者の割合も低く(第4波で17.6%,第3波で74%)、ICU入室は,第4波で18.5%,第3波で29.9%でした。
つまり重症化率が極めて低いことがわかりました。
死亡率は、第3波で29.1%でしたが、第4波では2.7%に減少しました。死亡率も低いです。
ちなみに南アフリカの成人44.3%がワクチン接種しており、50%以上が既感染です。
オミクロン株は、重症化率と死亡率が低い
ワクチンの影響なのか、オミクロン株の病原性が低いのかは不明
イギリス政府からのデータでは入院率はデルタ株の1/3でした。
小児患者でもオミクロン株PCR陽性者の中で入院する患者の割合は、デルタ株と比べて約半分でした。
これらはイギリスのケンブリッジ大学と政府からの共同発表です。
52万8176例のオミクロン株と57万3012例のデルタ株感染者を比較しています。
皆さんの気になるオミクロン株へのワクチンの効果はどのくらいなのでしょうか。
ワクチンのオミクロン株に対する予防効果は、デルタ株より低いが70%はある
オミクロン株が流行している南アフリカからのデータ(2021年12月29日発表)です。
オミクロン主体の オミクロン株主体の第4波期間(11月15日から12月7日)でのPCR陽性者のうち、41.4%がワクチン非接種の人でした。
ファイザー社製、2回目のワクチンを終えて2週間以上たっている人では33.0%でした。デルタ株流行期では8.2%でした。
これを計算するとワクチンの感染予防効果はデルタ株よりおとりますが、オミクロン株に対しても70%はあると考えられます。
オミクロン株には3回目(ブースター)接種が絶対必要
先ほど示したイギリス政府発表の50万人以上のオミクロン株のデータにもワクチンの効果の詳細が発表されています。
ファイザー社製ワクチン2回目から20週つまり5ヶ月経つと、オミクロン株に対して、わずか10%程度の感染予防効果しかなくなっていました。
ブースター接種を行うと、その後2週でワクチンの有効性が約70%まで上昇しています。それでも効果は時間とともに低下するようです。
ワクチンの感染予防効果は時間限定的なようです。
日本でのオミクロン株のデータは国立感染症研究所から(2022年1月5日)でています。
SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査(第1報):感染性持続期間の検討 (niid.go.jp)
2021年12月22日までの21例のオミクロン株の感染者のうち、ワクチン接種していない人は未成年の2例のみでした。
日本でも、ブースター接種をしていてもオミクロン株に感染した人は2例いました。
ブースター接種がまだ始まったばかりということを考えると、ブースター接種してもワクチンの感染予防効果は完全ではないと言えそうです。
この調査の本来の目的は、いつまで感染者がウイルスを排出するか、移す可能性があるかを調べるものです。
その結果発症または診断後10日目以降はウイルスは分離できなかった(他人に移す可能性が低い)とのことでした。
引き続き自宅療養期間は10日間が維持されるものと思われます。
無症状者は診断後6日目以降にウイルスは分離できていませんでした。
症例が集まればアメリカのように濃厚接触者は5日間自宅待機に短縮されるかもしれません。(現行は健康観察自宅待機期間14日間です。)
ワクチンの感染予防効果は急激に減少も、入院と重症化予防効果は保たれ続け、ゆっくりと下降する
入院予防と重症化予防には時間が経っても効果を発揮し続けます。
2回目接種後25週つまり6か月以上経過しても、感染予防効果はほぼなくなっても、入院予防効果は52%と保たれていました。
もちろんブースター接種を行って2週経過すると重症化予防は88%にもなります。
これから定期的なワクチン接種は、感染予防よりも重症化防止のために続けていくべきと考えます。
やはり合併症のある人や、高齢者は必ずはやめにブースター接種をすべきであると思います。
たとえワクチン接種を行っていても、感染予防に対しては、マスク装着や飛沫対策の換気の徹底などの基本的感染予防が重要であると言えます。
まとめ 12/31時点でわかっていること
国立感染症研究所発表の全世界のオミクロン株の現時点2021/12/31で分かっていることが表でまとめられています。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10876-sars-cov-2-b-1-1-529.html
オミクロン株は南アフリカから始まり現時点で日本も含めほとんどオミクロン株の感染者で占められている
Institute for Communicable Diseases. SARS-COV-2 GENOMIC SURVEILLANCE UPDATE (24 DEC 2021). https://www.nicd.ac.za/diseases-a-z-index/disease-index-covid-19/sars-cov-2-genomic-surveillance-update/
現時点12/19でオミクロン株により死亡した症例は世界28か国で7241例中0、イングランドでは102,729例中29例の死亡
European Centre for Disease Prevention and Control. Country Overview Report: Week 50, 2021, produced on 23 December 2021. https://covid19-country-overviews.ecdc.europa.eu/
UK Health Security Agency. Omicron daily overview. 24 December 2021. https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1043866/20211224_OS_Daily_Omicron_Overview.pdf
100人いたら22人が感染する可能性がある。ウイルスに暴露されてから発症するまでの潜伏期間は三日
SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査(第1報):感染性持続期間の検討 (niid.go.jp)
南アフリカでの12月4日までの報告では、1人のウィルス感染者がうつすであろう実効再生産数は2.55人、全国的には、直近(12/21時点)で1.31、首都圏では1.26、関西圏では1.35
National Institute for Communicable Diseases. The Daily Effective Reproduction Number in South Africa. https://www.nicd.ac.za/diseases-a-z-index/disease-index-covid-19/surveillance-reports/covid-19-special-reports/the-initial-and-daily-covid-19-effective-reproductive-number-in-south-africa/
https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/10891-covid19-ab66th.html
デルタ株と比べてオミクロン株は家の中で家族に移す確率は2.9倍高い、家庭外など二次感染率は1.96倍。家族が感染した場合家族内で2次感染を起こす可能性は44.7%(韓国)、国内では26.1%、沖縄31%、海外11.3%(ワクチン2回接種完了者)、25.8%(未接種者 ) 。
3차접종 적극 참여, 누적 1,100만 명 넘어(12.20., 정례브리핑)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2488-idsc/iasr-news/10885-504p01.html
オミクロン株による症状の一般的なもの(70%以上)は咳、鼻水、だるさ、喉の痛みで、発熱は半数程度
ユーロサーベイランス|2021年11月~12月、ノルウェーのSARS-CoV-2オミクロン変異体によるアウトブレーク (eurosurveillance.org)
オミクロン株であっても現時点の PCR や抗原検査でコロナウイルス感染を確認できる
World Health Organization. Enhancing Readiness for Omicron (B.1.1.529): Technical Brief and Priority Actions for Member States. https://www.who.int/publications/m/item/enhancing-readiness-for-omicron-(b.1.1.529)-technical-brief-and-priority-actions-for-member-states
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