難聴者は認知症になりやすい。認知症予防に65歳までに補聴器を使用開始しましょう。

難聴と認知症の関係についての研究と、それを予防するために補聴器が有用だというお話しです。認知症はいったん正常に発達した知能が一過性でなく、どんどん低下している状態のことになります。 単に老化に伴う物忘れは含まれません。

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認知症の初期の症状は『もの忘れ』+理解し判断する力(認知機能)の低下

認知症の前の段階として、記憶機能の低下から始まります。記憶の障害を認め、一般的な認知機能や日常生活能力はほぼ保たれます。認知とは外の世界の物事を、感じたうえで、それがなんであるかを判断し、解釈する力になります。記憶力の低下(もの忘れ)のみであれば認知症ではなく老化現象です。ただし、この段階から4年後には14%の人が認知症になりますので認知症の前段階ともいえます。ただし46%の人は正常に戻っているので『もの忘れ』のすべてが認知症になるわけではありません。

もの忘れでも、短期記憶と言って数分前や数日の事に対する記憶を忘れやすくなります。さらに体験した記憶を丸ごと忘れることも認知症に多く認められる『もの忘れ』です。友人と会食をしたときに、会食で食べた食事の内容を忘れるのではなく、会食をしたこと事自体丸ごと忘れるのです。時間や場所のことが分からなくなってきたり、計算能力がおちたり、物事の理解し判断することができなくなってきたら、認知症の始まりと意識する必要があります。

認知症にならないために改善するべき12の危険因子

世界で一番権威のある医学雑誌のランセットに、認知症予防に関する論文のまとめが2017年に発表され2020年に改訂されています。

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30367-6/fulltext

12の危険因子が挙げられています。A①子ども時代の教育程度の低さ、B中年期45-65歳:②難聴、③頭部外傷、④高血圧、⑤過度の飲酒、⑥肥満、C66歳以上:⑦喫煙、⑧うつ病、⑨社会的孤立、⑩運動不足、⑪大気汚染、⑫糖尿病、になります。これらを改善することで発症を遅らせたり、発症を40%程度予防する効果が期待できるそうです。

難聴は認知症の一番の危険因子

ランセット誌で報告された、難聴に関する研究では、9~17年後に認知症を発症するリスクは難聴の人が正常聴力の人の1.94倍であったと報告しています。難聴と認知症は有意に関連するということは、科学的に証明されてはいます。別の3つの研究では聴力低下が10dB毎に認知症のリスクは1.3倍になることも報告されています。

ただしこれは、難聴が認知症の原因となっているという事ではありません。認知症の原因と難聴の原因がおなじであれば、難聴になる人は認知症にもなりやすいという事かもしれません。血流が不足して、細かい臓器(脳や耳の奥の神経)に行く血流が悪くなって認知症や難聴が起こると考えると、それらのリスクを高める、糖尿病や動脈硬化、喫煙が悪いという事になるからです。ただし難聴を改善することで8%の認知症予防効果があるとのことは最初に示した認知症予防ガイドラインに明記されています。

補聴器は認知症の予防になるのでしょうか?

予防になります。補聴器をすると短期記憶力の低下を抑えられます。つまり補聴器を使用することによって認知機能が低下していくスピードを緩やかにしたということが証明されています。

50歳以上の2.2万人以上のアメリカ人の健康及び老化をテーマとするアメリカ国立老化研究所の出資による研究があります。十個の単語を聞いて、すぐにその単語を答えた場合と、少し遅れて答えた場合の正答率を比較した研究です。短期記憶の記憶力を測っています。これは認知症と強い関連があるスコアです。 1996年から2014年の18年間に2年ごとに、個人個人で調査を行っています。年齢とともにこの記憶力は下がっていくのですが、この18年の間に補聴器を新規に使用開始した2040人の群では補聴器を使用をし始めると記憶力低下の幅が緩やかになっていました。補聴器は認知機能低下を遅くすることが証明されています。

日本の7つの大学病院で共同で行なった研究もあります。数字符号置換検査と言われる認知機能のテストの点数が、補聴器を使うことによって使う前と比べて半年後に有意に高くなったとのことです。つまり補聴器を使った97名(平均76.9歳)の認知機能が向上したわけです。

難聴で人との会話に不自由するようなら、65歳までに補聴器をつけよう

聞こえにくさを最小限に抑えることで、日常生活に積極的に関わることも増やす効果があります。社会的孤立やうつを防ぐことも認知症の予防になります。補聴器をすることで、社会生活の質の改善をさせれば間接的に認知症の予防にもなると思います。

現在の生活の質を落とさないように、補聴器を積極的かつ早めに使っていくことが一番重要だと考えられます。ランセットの認知症予防のポイントでも45-65歳までの難聴が危険因子でした。難聴が気になっているのであれば65歳までに補聴器を使用開始することが良いと思います。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 長年、自動車修理工場のうるさい中で働いてきたためか( ? _ ? )
    「騒音性難聴」です。
    60歳で定年退職して、現在63歳です。
    12月の誕生日を迎えると、64歳。
    どれぐらい聴力が落ちたら、補聴器が必要ですか?

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