厚労省は薬局で医療用コロナウイルス抗原検査キットの発売を承認しました。我々がコロナウイルスかどうか心配な時にどのように活用すれば良いのでしょうか。医師が解説します。
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抗原検査キットは研究用でなく、医療用を購入しましょう
現在も色々な所で抗原検査キットは発売はされていました。これらは研究用とされており性能がしっかりと担保されたものではありませんでした。
研究用は承認を受けたものではなく性能等が確認されてはいません。
厚労省も消費者の自己判断によりコロナウイルス感染症の罹患の有無を調べる目的では使わないように令和3年2月25日に注意喚起しています。000745521.pdf (mhlw.go.jp)
そこで厚労省は、抗原検査キットをより入手しやすく家庭で体調が気になる場合にセルフチェックできるように医療用の抗原検査キット薬局で 販売することを 令和3年9月27日に許可しました。000836277.pdf (mhlw.go.jp)(令和3年9月27日厚労省通達)
医療用というものは現在医療機関に納品されコロナ抗原ウイルス検査として認められている製品です 。
研究用と医療用でどのくらい性能は異なるかは不明です。しかし医療用は品質と性能が保たれているということは間違いありません。
医療用抗原検査は、薬局でしか購入できないし、署名が必要になる
このため医療用を販売するにあたっては薬剤師が 情報提供を行い 販売した数量や日時などを2年間保存する 必要があります。
情報提供を受け内容を理解したということで購入者は署名が必要となります。
この内容は3点です。①もし抗原検査で陽性であった場合は速やかに医療機関を受診する②もし陰性であったとしても偽陰性の可能性があるため、症状があるときには医療機関を受診する③症状がない時でも感染対策を続けることになります
陽性であった場合医療機関で再度抗原検査もしくはPCR検査を行い確定診断をすることになります。この場合検査料は現在公費負担となります。
自治体・医療機関向けの情報一覧(事務連絡等)(新型コロナウイルス感染症)2021年|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
風邪症状が出た日から9日目の間に抗原検査陽性の場合、確定診断となる
どのように医療用抗原検査を使用すればよいのでしょうか?
令和2年5月13日の厚労省からの情報では医療用抗原検出用キットのガイドラインが示されています。
200508_09_SARS-CoV-2_K4B01T_5.indd (mhlw.go.jp)
これによれば症状がでて2日目(のちに変更され現在は症状が出た日も含まれています)から9日目に抗原検査陽性の場合は確定診断とできます。ただし除外診断には適さないため陰性の場合は確定診断のため PCR 検査を行う必要とあります。
現在では症状が出た日から9日目の間であれば抗原検査有効と検査有効期間が延びています。
信頼性はどれくらいあるのかな?
臨床試験で、PCR 検査と抗原検査の結果が異なっていないか成績を比較しています。72例について陰性一致率は98%、陽性の一致率は37%でした。
保健所で行った比較の試験では、PCR 検査検体124例に抗原検査を行い、陽性と結果が一致した割合は66.7%、陰性一致率は100%でした。全体として結果が一致した割合は94%でした。
これを考えると陰性が出たとしても実際は陽性が紛れている可能性があります。これを偽陰性といいます。
逆に、コロナウイルスに感染していないのに、この抗原検査が間違って陽性と出る可能性は極めて少ないということがわかります。
抗原定性検査ですので、ウイルス量がとても多い場合は陽性と出て、ウイルスがあってもある程度少ない場合は陰性と出るからです。
そのため、風邪症状があった場合に抗原検査の信頼度があがると考えられるため、症状がある人に検査することが推奨されています。
症状があれば、何かしらの風邪ウイルスが鼻水の中に平時より増えている状態だろうと予想されるからです。
抗原定性検査は、発症初日から9日目までは確定診断として使うことが可能だが偽陰性に注意が必要
ここで重要なことは抗原定性検査は発症初日から9日目までは確定診断として使うことができます。
ただしそれ以外については PCR 検査が推奨されています。
これらは、医療施設における抗原検査の位置付けについて、新型コロナウイルス感染症病原体検査の指針第4版に詳しく書いてあります。COVID-19病原体検査の指針v4_初.indd (mhlw.go.jp)
症状がある場合は薬局で抗原検査を、ご自身でやられて結果が陽性であればコロナウイルス感染と考えて良いと思います。
ところでコロナウイルス感染の症状というものはどのようなものでしょうか。嗅覚障害味覚障害はコロナウイルス感染に特徴的ですので真っ先に抗原検査を行いましょう。ほかにはあるでしょうか?
熱が出たときだけ検査すればいいは間違い。気になれば咳、鼻水など、風邪の症状すべてです。
症状というものは咳でも鼻水でもノドの痛みだけでも当てはまります。新型コロナウイルスの症状は一般的な風邪症状を引き起こし特徴的なものは嗅覚障害くらいだからです。
以下の記事を読んでみてください。検温はコロナウイルス感染検出の役には立ちません。
新型コロナ感染者を見つけ出すために、施設入り口の検温は有効なのか?(忽那賢志) – 個人 – Yahoo!ニュース
コロナウイルス感染を疑うのに、発熱だけの症状とは限らないのです。
コロナウイルス感染症の人で、発熱があった人は43%だけというアメリカの報告があります。また他の報告では、コロナの陽性者の体温を調べた結果、感染者の2割程度しか38度以上になっていなかったそうです。
風邪の症状があってコロナウイルスが心配と思ったら検査をしましょう。
ただし偽陰性という可能性がありますので、結局は感染対策や安静が必要です。 病院に行くべきかどうかの判断にはなると思います。
ホントは感染しているのに陽性とならない偽陰性があるなら、抗原検査は意味がない?
具体的にどう利用すればよいのでしょうか。私の個人的な考えを発表します。
風邪症状が出てから症状が良くならず、悪化して5日目を迎えたら、検査をしてみることをオススメします。
なぜなら、コロナウイルス感染症は5から7日目に急に重症化して肺炎や酸素投与が必要になる例があるからです。
重症化のリスクが高い人は重症化が起こる5日から7日目 の前にコロナウイルスかどうかが分かっていた方がいいです。
ワクチン接種をしている人は重症化のリスクが低いわけですから、積極的に検査をする必要はないのではないでしょうか。
その他に注意する点は、偽陰性を少なくするためには、鼻水の採取を丁寧に行うべきと思います。丁寧というか鼻の中にスワブを入れいる時間を長くすることが大事であると考えます。
ココだけの話、最も検査結果の信頼性をあげる方法は、短期間に2回検査を行う事
最も検査結果の信頼性をあげる有効な使用法は、日にちを変え2回検査を行い、2回とも陰性が出たらコロナウイルス感染でないと判断することです。
短期間で2回検査を行えば、2回とも偽陰性となる確率は極めて低いですし、コロナウイルスの量が増えている時期を的確に捉えることができるはずです。こういう理由で、2回検査を行うことが良いと思います。
実際にアメリカのFDA認定を受けている抗原キットBinaxNOW( https://www.youtube.com/watch?v=baQQfoX-JXo )では、2キット最初から入っています。3日の間に2回行い2回とも陰性であればコロナウイルス感染症ではないと判断してもいいとされています。
ただしこれは、あくまでも私見ですので、ご了承ください。
2回は何時行うのが良いのでしょうか。
無症状でもいいのかしら?
風邪症状発現の初日と3日目、もしくはコロナウイルス陽性者と接した翌日とその2日後の2回をオススメします。
さきほどのアメリカの抗原検査キットは、36時間以上の間隔を空けて3日間で2回検査するようにとされています。
デルタ株のウイルス暴露からウイルス発生までの潜伏期を調べた研究を参考にします。
以前の株と違い、デルタ株は早くからウイルスを排出し、平均3.7日でウイルスを検出することが報告されています。
SARS-CoV-2デルタ変異体によって引き起こされる大規模で、よく追跡されたアウトブレークにおけるウイルス感染および伝染|メドRxiv (medrxiv.org)
この図を確認すると暴露後翌日か3日目に検査をし陰性であったとしてもさらにその2日後にもう一度検査を行えば 83%の確率でウイルスが最大量排出されているタイミングで検査をすることができます。
3日の間に2回検査ができれば万全です
その結果陰性が2回続けば極めて高い確率でコロナウイルスではないということの証明になるかと思います。
実際2回行うときに一番問題なのは、検査キットの値段の高さ
アメリカのキットは530円ですが、日本はもっと高くなるでしょうから。ちなみに医療機関受診は、公費負担で検査料は無料です。
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